漫画家主導の絶版漫画共有サイト『Jコミ』がβテスト開始

さて、本家が公開開始する前から既にあちらこちらで話題沸騰の絶版漫画共有サイト『Jコミ』が、とうとうβテスト開始だそうで。
さっそく予告どおり『ラブひな』全巻の無料公開がはじまっています。

Jコミ』ってなに?

作者から公開許可された絶版漫画を広告付きのPDFで共有するサイトです。
あらかじめ決められた許諾リストに載っている漫画であれば作者本人でなくても自由にアップロードしてもよく、広告付きPDFへの変換作業はJコミ側が自動でやってくれるのでUPする側は漫画のキャプチャ画像をまとめた圧縮ファイルを送るだけでいいんだそうな。


公開開始した『ラブひな』の作者であると同時にJコミの社長でもある赤松健さんが専用のブログを作って解説していますので、さらに詳しくはそちらを参照のこと。

ネットによく転がっている「漫画のJPGファイルをZIP化したもの」をアップロードすると、自動で解凍して広告をはさみ、PDF化して公開する機能なのです!!

作者の許諾を得た「漫画ファイル」を市民にアップロードしてもらい、(一応スタッフがチェックした後に)広告付きで公開すれば、作者自身がスキャンしたりアップロードする必要もなく、どんどん「絶版マンガ図書館」が大きくなっていくのでは?!

そう、ニコニコ動画YouTubeみたいに!

(株)Jコミの中の人

さすが赤松さんというべきでしょうか、やたらめったら読みやすくてわかりやすい記事でユーザーの期待を煽るわ煽るわ(笑)。
ひととおり目を通した後は目をキラキラさせて「なんて画期的な試みなんだ! これは歴史が変わるぜ!」とすっかり絶賛モードになってしまいそうです。というか僕はなった。Jコミやばいマジやばい。

PDFの電子書籍ってどんな感じ?

というわけで、既に全部読んでる漫画ではありますが、試しにってことでさっそく『ラブひな』をDLしてみました。
ちなみに、絶版も何も『ラブひな』って今でも普通に売れてる漫画じゃね? と疑問に思ったんですが、赤松さんが講談社に頼んで特別に絶版扱いにしてもらったそうで。赤松健パネェ。

まず冒頭数ページ*1に広告が入る。リンク付きの広告なので、クリックで広告先に飛びます。
ローカルに落とした電子書籍からWebサイトに飛ぶってのがなんだか新鮮な感覚ですね。

で、そこから先は普通に『ラブひな』開始。
おお、すごいすごい。普通に読めるどころか必要以上なくらいに高画質*2だ。これ一回見てしまうと、家にある本も全部この形式で保存したくなってくるなあ。僕は家が本で埋まると耐えられなくなってまとめて処分したくなる性質なので特に。
冒頭に広告が数ページ挟まるくらい全く気にならないし。ちょっとこれ、この調子でコンテンツが順調に増えるとえらいことになりそうな……。どうだろう、むちゃくちゃおもしろいと噂にだけ聞いたことあるけど未だに読めてない昔の漫画とか、それこそ数え切れないほどあるわけですが。

「公式」に共有されることの強み

いやー、しかしJコミの中の人のブログ読んでるとテンションあがりますわ。
例えばこのへん。

  • Winnyなどに流れている違法マンガに対抗しつつ、さらに収入化に繋げられる、恐らく唯一の手段である。
(7) この広告枠が、企業側にとっていかに有利か - (株)Jコミの中の人

ネットの違法アップロードのみならずブックオフなどの新古書店に対してもいえることなんでしょうけど、漫画家や出版社にとっていくら都合が悪い存在だとしても、既に巨大な流通が確立してしまっているものに対してモラルだの規制だので対抗するのはまあ、普通に考えて難しいですよね。頑張ってもいたちごっこにしかならない。ならば全て取り込んでそれらよりも巨大になってしまえばよいと。
赤松さん自身も例に出しているニコニコ動画は、そのようにブラックもグレーゾーンも一緒くたに取り込んで一定の成功を収めた先例と言えるでしょう。まあ収入的には「成功」と断言していいのか怪しいもんではありますが(笑)。ニコニコ動画って一回黒字化した後もちゃんと儲かってんのかなあ。


既にネットのあちこちに転がってる漫画云々に関しては、漫画家や出版社にとってだけ都合が悪くて受け手側にとっては関係ないかというと、それがそうでもないんだよね。いや長期的にみてコンテンツ産業の力が弱まるとかそういう話じゃなくてですね、後ろ暗さをもちながら作品に触れ続けるってのがよろしくないんだな。かなりよろしくない。そうやって後ろ暗いもの同士で小さく固まってこっそりしてちゃ、どんなに素晴らしいものに触れても無邪気に感動の共有ができないじゃん。せめてニコニコくらいのカジュアルさがないと、きっと読者だってつまらない。
だから、こういう試みの成否は他人事じゃないんですよね。作家や出版社の収入がどうこうじゃなく、僕ら自身に直接関わることだと思う。まあ、それはJコミに限らず電子書籍全般、アニメや映画の公式配信、ゲームのDL販売などなど、作品の共有がされやすくなるサービス全てにいえることですけど。ほんと成功してくれるとむちゃくちゃ助かる。

まだコミックスにはなってないんですけど、いまヤングジャンプで連載中のサラ金がちょうど漫画の電子書籍化の話をかなりガチでやってて面白いので、興味がある方は読んでみては。

*1:広告は真ん中とラストにも挟まれてます。たぶん後ろの広告は冒頭に比べてかなりクリック率が下がるでしょう。当然作者に還元されるなら意識的にクリックしようって人も一定数出てくるだろうけど、それが普通の広告に比べて明らかな差になりえるのかどうかも気になるところ。

*2:引用画像はキャプチャなのでかなり小さくなってます