キャラクター小説は既に中国が通り過ぎた道なのか

秘曲 笑傲江湖〈7〉鴛鴦の譜 (徳間文庫)

秘曲 笑傲江湖〈7〉鴛鴦の譜 (徳間文庫)

こないだアイマスと一緒にAMAZONでまとめ買いした『秘曲笑傲江湖』を読んでいます。相変わらず翻訳小説とは信じられないほど読みやすくて、まるでライトノベル*1のよう。
今読んでるのは2巻なんですが、主人公令狐仲と妹弟子の岳霊珊のベタベタなラブコメ展開にニヤニヤが止まりません。ライバル出現で心変わりしそうなヒロインの様子にのたうちまわって病気になるほど心乱される主人公の描写とか、もう完全にラブコメですよ。これ武侠小説じゃなかったのか(笑)。
この令狐仲のキャラクター造形絶妙ですねえ。完璧超人じゃなく、むしろあっちこっちに心が揺れる未熟者でもあるんだけど、無茶苦茶いいやつ。これからのどんなふうに成長していくのかが楽しみでならない。


今ちょうど読んでるところが令狐仲と田伯光というキャラの掛け合いなんですが、これがまた楽しい。この田伯光というのは好色であらゆる悪事を犯してきたどうしようもない悪党だが実際に相対してみると気持ちのいい好漢でもある、というなかなか複雑なキャラ。一巻から登場しているんですが、これから先も全編通してトリックスターとして活躍するんだろうなーというのが予想されます。
主人公の令狐仲とは立場的には絶対に相容れない敵と言ってもよく、実際一巻の時点で既に戦って令狐仲が負けてたりするんですが……この二人が会話をする場面はまるで十年来の悪友同士のようなんですよね。

「令狐兄いが華山の頂上で入獄中だと聞いて、さぞや口寂しいんじゃないかと。それで、長安謫仙楼の地下室から、百三十年前の美酒を二かめ手に入れ、あんたと心ゆくまで呑もうと思ってきた」
「百斤もの酒を華山の頂上まで担いでくるとは、その誠意は大したもんだな。さあさあ、さっそく呑もう」

たとえばこれ、唐突に現れた田伯光と令狐仲がはじめる会話。
この二人敵同士ですよ敵同士! しかもその直前に令狐仲は師匠から自分たちのお膝元で田泊光が悪事を働いてるから成敗するぞ、という話を聞いて了解しているんですよ。その二人の会話がいきなりこれ。なんとも粋じゃございませんか。
もちろんその後令狐仲は「俺とあんたではしょせん相容れない、令狐仲を友達に出来ると思うな」というふうに切って捨てるわけですが、そこに至るまでの丁々発止のやりとりがとっても気持ちいい。会話にリズムがあって、音階が付いて頭の中に響いてくる感じなんですよ。いやー、おもしろいなあ。


この小説めちゃくちゃ登場人物多くて、ここで例に出しているキャラはほんの一部にすぎません。でもどいつもこいつもまあ濃いわ濃いわ。覚えるのに全く苦労しません。キャラクター小説は既に中国で完成していたのか! と思わされます。よく漫画やなんかで中国人キャラが言う「そこはわれらが○○年前に通り過ぎた道だ!」というような決まり文句もあながちばかにできないよね。


ところで、まとめ買いした秘曲笑傲江湖には1巻発売直後とは違う「金庸シリーズフェア」というやたらとでっかい帯*2が付いてたんですが、そこに描いてあるイラストがまんまラノベ*3で、しかも煽り文句が「熱血漢VSツンデレ美女」というのに吹いた(笑)。いやー、よくわかってらっしゃる。

続きよんでます

せっかくの連休なのでまとめ読みー。えいえい鬼かわいい。なにこの教科書のようなツンデレ

*1:褒めてます

*2:文庫の半分以上を覆ってる

*3:文庫自体は↑の書影をご覧になればわかるとおりごく普通の装丁だからものすげえ浮きっぷり(笑)