君の知らない魔王と勇者の物語

最近、2chで連載されていたとあるWeb小説が、あちらこちらで話題になっています。
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」目次



これ、ストーリーのタイトルというよりスレタイだから、ぶっちゃけ紹介しづらい(笑)。記事タイトルに入れようにも長くなりすぎちゃってもー。
なぜトップではなく目次にリンクを貼るのかというと、トップに飛んだ時点でほんの少しだけネタバレがあるから。個人的には踏んでも全く気にならんレベルだとは思うのですが、前情報無しで読みたい人は冒頭からしばらく読み進めるまでトップページにはアクセスしないようにしましょう。特にキャラ紹介ページは読むだけでかなり先の展開が予想ついちゃいます。*1


最初に「最近」と書きましたが、連載期間を考えると最近どころの話じゃないかもしれません。でもまあ、少なくとも僕の巡回範囲の人たちが軒並みどハマリしだしたのはつい最近。

 そして数頁、あるいは数十頁をめくった時点で、あなたは遂に確信する。この作品は「違う」。じぶんの本棚にならぶほかの99%の本とは決定的に異なる種類の代物だ、と。あなたは舌なめずりしながら呟くだろう。こいつは、凄いぞ。

泣けるほどおもしろすぎるネット小説を読んだので熱烈推薦するよ。 - Something Orange

 で、ぼくは実は全体の半分くらいまでしか読んでいないのですが、その時点でもこれが傑作であることが確信できます。

 それも、若い時分に読んでいれば、確実に人生を変えることのできるレベルの超傑作です。

 読みながら「この作者は、いったいなにものなのだろう」と、何度も思わされました。

人生を変えることのできる物語/魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 - ピアノ・ファイア

もう、大・絶・賛! って感じですね。普段は大げさに見える表現を嫌いがちないずみのさんですら、ひっじょーにストレートにほめている。僕は雑食性で人のお薦めにからきし弱い性質なので、そりゃもう、うれしそうに読みに行きますわ。
ここまでほめられてると「えーほんとかよ?」って疑いたくなるもんでしょうけど……大丈夫大丈夫、ホントに凄い
僕もまだ7割程度しか読破してないけど、現時点でも破格の面白さですよ。なんだこりゃ。

どんな話?

内容については他の方がかなり詳しく書いてくれてるので簡単に。*2
タイトルからもわかるとおり、有名なドラクエの魔王と勇者のやりとりのパロディからはじまる、ファンタジー世界を舞台にしたオリジナル小説です。タイトルが長いので「ドラクエSS」と呼んで話題にしてるのですが、あくまでドラクエはパロディ元のひとつであって二次創作ではないですね。『アラビアの夜の種族』がウィザードリィを元にしてるのが事実だとしてもありゃ二次創作じゃねえわなってのと同じ。

こないだ紹介記事を書いた『Romantic Sa.Ga』*3がロマンシング・サガを下敷きにしたオリジナルストーリーであることとも近いですね。こっちは「アイマスの二次創作」であることは確かですけど。
その他にも膨大な作品の引用やパロディ要素があちらこちらに散りばめられていて、メインの登場人物が経済の専門家であったり、ファンタジー世界だけど商人がリアルに活躍したりするのは『狼と香辛料』に近いものも感じさせますし、

 最後まで読んでいないのに……しかも、読了組の友達が言うには、この先から更に信じられないくらいの奇跡のような物語を見ることができると予告されているのですが、それでも傑作だと実感できるのは、みなもと太郎風雲児たち』を読んでいた時と同じような感覚が今ぼくの中で起こっているから。

 登場人物たちの、理想の高さが感染してくる、あの感じ……。

人生を変えることのできる物語/魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 - ピアノ・ファイア

いずみのさんがおっしゃるとおり、群像劇としては『風雲児たち』を読んでいる快感にとても近い。リアルに設定されたファンタジー世界の行く末を騎士や商人や王族それぞれの立場から描くという点で『Landreaall』にもかなり近いですね。
様々な作品を想起させるというだけでなく、直接的に使われているキーワードもかなり幅広い範囲からとられています。読み進めて新しい言葉が出てくるたびに「あ、これなんか聞いたことあるぞ」と思わずググりたくなってしまうはず。クリルタイとかマスケットとか種痘とか農法の名前とか経済用語とかSF用語とかクトゥルー神話からの引用とか、まあ色々ある。一部を知ってたとしても、これ全部分かる人はなかなかいないんでないかな。
リアルタイムで連載していたときは、きっと本文内で出てきた用語をそれぞれ得意な分野の職人が同時並行で解説するという、ニコニコ動画架空戦記モノあたりでよく起こる流れが発生していたんじゃないかなーと予想します。このへんはすぐに元ネタを調べることが可能な「ネットで読む小説」ならではの魅力なのではないでしょうか。

おがきちかも見てる

上で近いものを感じさせると書きましたが、なんとずばりその『Landreaall』作者のおがきちかさんがこんな感想をTwitterで書いてたり。

こりゃ熱い。両方の読者ならもう「はいはいはいはいわかるわかる!」と激しく頷かずにはいられないはず。*4

同作者の他の小説も凄いらしい

ああっ、、、この人はっ!!!この作者は、まおゆうで目指した『あの丘の向こう側』をここでも見るつもりだよっ!!!!!!って涙が・・・・・

ママレードサンドさん(橙乃ままれ)の新作(途中)『ログ・ホライズン』第一部読了  あまりの素晴らしさに絶句 - 物語三昧

なにやら新作もやっぱりすごいんだとか……。今から読むのが楽しみ。


……いやー、しかしWeb小説世界もたいがい広大そうですね。ソードアートオンラインアクセル・ワールドの川原さんが商業的にかなり成功したってのもあるし、Web小説ってジャンルは今いい感じに盛り上がってるのかもしれません。
第2・第3の川原礫の誕生も近い?

*1:まあ個人的には、これだけおもろい話なら、少の前情報で初見の驚きを期待に変換したところで全く問題ないと思いますが。

*2:余談だけど、誰々が書いてくれてるから僕は書かなくていいやーってのはブロガーにとっては鬼門の考え方ですよね。むしろみんな書いてるから俺も俺もー! って方向にいかないと更新できなくなる。

*3:あいかわらずむちゃくちゃおもしろいぞ!

*4:あまりに納得度高かったのでうれしくなってまとめちゃいましたが、まずかったらごめんなさい。