ニコマス界隈の特異性と、それに対抗する人々

このところアイマス動画*1の紹介ブログもずいぶんと増えました。
bloglinks
サイドバーにも貼っているこちらの紹介サイトリンク集を見て頂ければわかるとおり、新着紹介、ジャンル特化、情報系などなど、非常に充実しています。


しかし、実は一つの動画について詳細にじっくりと語り、「評価をする」タイプの記事は意外なほどに少ないんですよね。まあもちろん皆無というわけではないのですが。
なぜか? それはニコニコ動画の自主制作ムービー、その中でもニコマスコミュニティに顕著に見られるある特徴によるところが大きいと思われます。


もったいぶってもしょうがないので一言で表すと、動画制作者と視聴者の近さです。まあ、ちょっと↑のリンク集から適当にいくつか回ってコメント欄を確認してみてください。作者率の異常なまでの高さに驚くはず。*21600人からいる作者さんたち、ニコニコ動画外部でも非常に活発に活動しておられるのです。
小説や漫画などのレビューサイトにおいて、「心構えとして、作者や関係者は見ているものだと思って書いたほうがいい」みたいなことはけっこう以前から言われていたことではあります。でもねえ……ニコニコ動画アイマスコミュニティはそんなレベルじゃないのね。思って書いた方がいいというか、見てるんです。ほんとに。しかもまたこのPさん達がお祭り好きでノリのいい人ばっかなので、ご本人さんからかなり高確率でコメントが付くのです。
感想やレビュー書いてて、こんなにやりがいがある界隈もそうないのではないでしょうか。自分の大好きな動画を作った本人とあっさりコンタクトが成立して、交流できてしまうのですから。ちょっとこれは過去にあまり例をみない状況なんじゃなかろうか。同じニコニコ動画発祥のVOCALOID界隈もmixiでかなり濃い交流が進んでいるという噂も聞きますけど。


この状況は、見る人に対して作る人の数の割合がやたらと高くなってきていることも原因のひとつでしょう。作者さんの増加は全く衰えていないのに、視聴者の総数はそう変わっていないことが色々なデータから指摘されています。
アイドルマスター 音無小鳥のデータマスター3!‐ニコニコ動画(SP1)


発表される動画の総数に対して、見る人の数が足りない。作者さんは、反応に飢えているのです。
fanletter_big
現在祭りとして開催中の「ニコマスファンレター」はそれに対するひとつの対応策です。もっと反応が欲しい! という作者、ブログを持って何かを書くのは敷居が高いがニコニコでコメントするだけじゃなく自分の好きなPにもっとメッセージを伝えたい! という見る側の需要の両方を満たした、素晴らしいアイデア。これは祭り期間終了後も継続的にPへのファンレターボックスとして機能するそうです。このためにデータベースまで構築した管理人のarakawa77さんGJ!


だいぶ遠回りしましたが、ここで話は戻ります。ニコマス紹介系ブログは、本人が、仮に本人じゃなかったとしても動画制作者がものすげえ高確率で見てる、と。
さて、あなたはその状況で、詳細に、ネガティブな部分も交えつつ、評価とかできます? で き ね え よ !!
……はい、というわけです。そりゃあもうよっぽど面の皮厚くないと、適当なことは書けやしません。技術的なことを知ったかぶりで書けばあっという間にメッキが剥がれます。作者の意図はこうだ! と断言しようもんなら、思いっきり本人から突っ込まれるのです。純粋に好みだけで書くとしても、本人さんが見てる可能性高いとなるとわざわざネガティブなこと書かなくてもいいよね、というふうになりがち。
でもねえ、それで素直な反応が書けなくなる/見れなくなるってのは、ブロガーにとっても作者にとってもある意味本末転倒なんだよね。例えば、「ニコニコの作者は素人なんだから面白みが少なくても良いところを見つけていこうぜ!」って考え方ならわかるけど、「叩くくらいなら黙れ、ネガティブなこと一切書くな」までいくと行き過ぎ。誰も手加減しろなんて頼んじゃいないわけで。
まあ、黙らなきゃいいんだけどさ。広く公開した以上、文章だろうが動画だろうが好き勝手言われるもんですから、堂々としてりゃあいい、色々言われるのは発表した以上覚悟すべき……という考え方もそれはそれで厳しすぎるんだよねえ。そんなに強い人ばっかじゃないもの。で、強い人じゃなけりゃ面白いものを発表しないかといったら、それが全然そんなことはないんだなあ。そのへんの心臓の強さと出てくるものの面白さって、あんま相関関係ないんだよね。もんのすごく繊細な変人が、わけのわからないすごいものを作り出したりするなんて、よく聞く話じゃありませんか。
そんなこんなで、当たり障りの無い書き方をする人が圧倒的に多くなるわけですな。俺これ大好きだけどお前らどうよ? だけでもまあ十分楽しいし。


でも、それじゃつまんないよ! もっと本気の論評が見たいよ! せっかくブログ持ってるんなら長文でじっくり語ってくれよ! という需要ももちろんあります。このへんはブロガーの性格もあるし資質もあるし、そもそもそういうことをやりたいのかどうか*3ってのもある。やりたい人が、バランス感覚を養った上でちょっとずつ挑戦していくしかないのでしょう。ただその場合でも前述したとおり作者との距離が近すぎるのが問題で、ここまで距離が近くて、完全に素直に書き続けられるかって言ったらそりゃ難しい。


そこで登場したのが、現在開催中の『じっくり語り語られてみよう』という企画です。

いつも見ている動画をより詳細に,より丁寧に,より素直に視聴・紹介してみよう

じっくり語り語られてみよう

お題となる動画を作者自身に提出してもらい、より詳細に、より素直に書いてみよう、という。これなら作者が提出するわけですから、間違いなく需要はあるわけです。手加減をする必要は全く無い。
もっと手加減抜きの詳細な感想が欲しいという作者と素直に思ったことを全部書いてみたいという見る側が上手く噛み合えば、これは面白い企画になるんじゃないかと思う。
えー、恐らくはあえてきっかけのところから外してくれているんだと思いますが、この企画には僕も関連してます。空気読まずに貼っちゃうけど、

このへんの何回も繰り返してもはや風物詩となりつつあるcocoonPと僕の「論評やろうぜ。本当はやりたいんだろ?」「やだ。やりたくないもん」というやりとりがありまして。*4それにRDGさんが、「じゃあ企画でやんね?」と反応したのがきっかけ。

そんな事情があるので、出来れば僕もこの企画には大いに協力したい。とりあえずまずは得意な宣伝からということでw
僕がブロガー側として本格的に参加するかどうかは……えー、参加作品をじっくり見た後で決めさせてください。



こんなふうに何か歪みや問題があったとしても、それに対抗してなんとかしよう! という人が自然と出てくる。とても頼もしいし、面白いですよね。

*1:うちも8割アイマスだけど、専門ではない

*2:うちはちょっと特殊。なんかコメントするのに勇気がいるんだそうな。なんでやねん。

*3:ぶっちゃけそういうことをやりたいって人はあんまり多くないと思う

*4:しかし我ながら身も蓋もないまとめだな……