「自然なのが不自然」 - 人力ボカロ『Level5 -judgelight-』 ドリ音P&KIDP&tiaraPインタビュー!


皆さん先週上がった強烈な人力ボカロと『とある科学の超電磁砲』を合わせたアレ、もうご覧になられましたか? まだ見てないならとりあえずすぐにみにいくべし。すごいよー。

人力ボカロについてはもうすっかりメジャーになってきたので説明不要かとは思いますが、知らない人は大百科参照のこと。

VOCALOIDは、自分で音階と歌詞を入力すれば機械処理で勝手にソフトが歌ってくれるが、中には「自分の好きなキャラクターに歌ってもらいたい!」「発売まで待ちきれない!」等の衝動に駆られるときがある。

そんな強い意志を抱いた賢者が、“本来歌うことを想定せずに収録した声”もしくは“既に完成した歌”などから歌詞および音階を切り出して、切り張り編集などをして歌わせた、まさに“力技”である作品につけられるタグである。

人力VOCALOIDとは(ジンリキボーカロイドとは)-ニコニコ大百科

↑の動画で人力ボカロを担当しているドリ音Pは、本来は”力技”であるはずの人力ボカロをまるで力技でないかのように自然に歌わせてしまう職人として、既にかなり話題になっている方。今回も、まさに「自然なのが不自然」としか形容のしようがないブツ。
元々ニコニコ動画で人気のあるレールガンMADに超絶人力ボカロが結びついただけで十分破壊力は高いのですが、この作品は動画編集にKIDP、捏造絵にtiaraP、音源のMIXにhikoPと、総勢4名の職人が自分の一番得意な部分を持ち寄って2分間にぶち込むという、自重のかけらもない合作動画になっています。
案の定、ここしばらくのアイマス系動画では考えられないくらいの勢いで再生されているようで。既に14万再生オーバー。冒頭で「まだ見てない人は」とか書いてますが、とっくの昔に見ている人も多いでしょう。


よって、今回の更新は既に見た人向けのものということで……ドリ音PとKIDPとtiaraPのインタビュー取ってきたよ!
このとんでもない合作がどのような経緯で作られることになったのか? 知られざる人力ボーカロイドの実態とは? というかあの立ち絵なにどうなってんの? そんな様々な疑問に作者自身が答えてくれました。なかなか興味深い内容になっていると思いますので、ちょっと長いけど、よかったらご覧くださいな。


では早速、どーぞ!

インタビュー開始

(※敬称略)
敷居: どうもはじめましてー。今日は例の大好評の合作動画について、一発インタビューってやつをかまさせていただけやせんか、とまあそんな流れで声をかけさせていただきました。しばらくお時間取らせますけど、よろしくお願いします。
KID: よろしくお願いします。
tiara: こんばんわー。
ドリ音: こんばんわー。
敷居: では、まず担当パートの確認から。人力ボカロ担当がドリ音P。
ドリ音: です
敷居: 動画編集がKIDP。レールガン×アイマス捏造絵作成がtiaraP、音源のMIXがhikoPという分担ですね。
KID: いえい
tiara: はーい
敷居: おっけーですね。ではお三方にこれから『【人力VOCALOID】Level5 -judgelight-【とある科学の超電磁砲】』の話を色々と聞いていきたいと思います。
【人力VOCALOID】Level5 -judgelight-【とある科学の超電磁砲】‐ニコニコ動画(9)

MIXヤバい、超ヤバい

敷居: 実は僕、先にKIDさんに音源だけ聞かされててかなり期待はしてたんですが……実際投稿されたものを見たらそりゃもう期待以上で興奮しましたねえ。
ドリ音: 音に関してはMIXの影響も大きいですね〜。
敷居: MIX担当はhikoP。
ドリ音: 今まで、MIXというものをよくわからずに適当にエフェクトかけて投稿してたんですよ。でもそれだと、他の人の投稿してる人力ボーカロイドに比べると音が汚くて。一体どうやったら綺麗な音になるんだろ?と思ってIRCで相談してみたのが最初です。
敷居: そこにたまたまhikoPが?
ドリ音: ええ、晒したときにIRCにいた数人の方が試しにってことでMIXしてくれたんですが、そのなかにhikoPがいまして。元音源いじめるくらい弄くりまわしてたのを聴いて、面白いな〜と。
敷居: ふむふむ。ミキサーの重要性は現在「歌ってみた」あたりでも相当広まってきてるみたいですよね。
ドリ音: MIXやばいですよ〜、全然音が違うので。
KID: 最初の方はもっと高音がかなり来るミックスでしたね。
敷居: 外から見ると同じ「音屋さん」ってイメージを持たれがちだとは思うんですが、人力ボーカロイドを作るノウハウと音源をMIXするノウハウは全然違う?
ドリ音: 正直いって、人力以外はど素人ですからw
KID: まあ、音にも工程が別れてて、作詞する人、作曲する人、編曲する人、最終的にミックス、マスタリングする人……みたいな感じでそれぞれ、必要な技術の種類が違うんですよ。
ドリ音: ミックス専門で仕事してる人もいますね。
敷居: 複数にわたってやる人もいるけど、ドリ音Pは人力に特化した職人だった、ということですか。
ドリ音: 完全に特化ですねえ。ちょっと難しい音楽用語とかよくわかりませんw
敷居: なるほど。なら得意な分野を分業して合作しよう、という発想が出てくるのは自然ですね。

音屋が組むならKIDP?

ドリ音: それでMIXしてもらったときに、ついでに映像も付けてもらおうという流れになって、KIDさんに白羽の矢が。
敷居: ここでKIDさん登場。
KID: 最初は、久々にIRCに入ったらいきなり音屋chの人達から「KIDPで良いんじゃね?」とか話が来て「???」状態。
ドリ音: 撃ったのはシロPかな?
KID: シロPとhikoPだったと思いますw
敷居: なるほどー。立ち絵担当のtiaraPを巻き込んだのはKIDPかな?
KID: ですです。まあ、一通り経緯を説明されて音源を聴いたんですよ。感想は「……俺を殺す気か!?」でした。
ドリ音: 出来としては特に良いものじゃなかったんですけど、hikoPのMIXで良い物に仕上げてもらった感じですね〜。
敷居: あー、KIDさんはあれだなあ。もう音源で無茶振りされたら超いい仕事をする人、というイメージが定着しちゃいそうですよね。これからもあちこちからふってくるんじゃないかなw
KID: いやーホントに迷ったんですよ。自分で映像付けられる自信はホントにこれっぽっちもありませんでした。でも話が来たのも何かの縁ですし、何より自分が断って他の人が映像つけたのを見るのが嫌でしたのでw
敷居: うん、いい攻めの姿勢だ!
ドリ音: 正直、断られると思ってましたw

人力の歌声には人力の改変絵を

*1
敷居: その後、ドリ音P→hikoP→KIDP→tiaraPというラインが完成するわけですが。
KID: tiaraPを誘ったのは自分ひとりじゃどうすることもできなかったからですね。3Dステージだろうがエフェクト系だろうが、キャプ映像のみではどうしても音源のインパクトには勝てないと思って。でもアイマスの絵自体を生かしてレールガン要素も入れて作りたくて。そこで真っ先にてぃあらんの名前が浮かびましたw
敷居: tiaraPの捏造絵さえあれば、この音源を使って動画を完成させることができるぞ、と。
KID: ですです。改変の絵を進んでやってくれる絵師さんって貴重なんですよ。普通の絵師さんにこれを改変してとかって、なかなか言えることではないですしね。個性を消せって言ってるのと同義ですし。
敷居: 絵師というよりも、昔からMAD職人がよくやる捏造壁紙に近いですよね。静止画MADを作る人がセットで捏造壁紙も作るってのは以前からよく見かける光景でしたし。
ドリ音: 最初は1枚絵で投稿しようと思ってたから、映像付けてくれるなら満足って感じで頼んだら、「助っ人呼びました」と。
tiara: 私はあんまりこっちの世界のことには疎いので・・・自分の個性とかあんまり考えないでやってるからなのかな、みんなやってると思ってやってたら意外とそうでもなかったというか。「限りなく公式っぽく」を目指すうえで本物っぽくするには、本物を使うのが一番てっとりばやいんでw
KID: てぃあらんは宇多田マコトメドレーの絵の通り、絵師としても非常に凄いですけどね。
tiara: ニコマスでは捏グラの方が先ですけどねw
敷居: 捏造絵職人でもあり絵師でもある。そういう人はなかなか珍しいんですね。
KID: ですです。
ドリ音: 普通描いちゃいますよねw
KID: そんな感じでレールガンの制服姿をねつ造して作ってと頼んだら、快く引き受けてくれたのでした。

視聴者層の意識

KIDP:後は個人的には、(tiaraPに協力を仰いだのは)映像の面でレールガンの客層もアイマスの客層も両方見てくれるようにしたかったからってのもありますね。
敷居: うん。現在までの結果を見る限り「レールガン」という絶好の題材を選ぶ上で、その選択はしっかり効果をあげてるんじゃないかな、と思えます。現段階で14万再生ですからねえ。
KID: その上で捏造の絵なら、あくまで「アイマス視聴者」と「レールガン視聴者」という2つの大きな括りに出来ますからねw
敷居: いやーあの動画い〜いコメントがついてますよ。歌詞職人も原作コメントも乱舞して。ああいう盛り上がり方は非常にニコニコ的で、理想的な流れの一つだと思っています。ま、多少荒れてることも含めてね。
*2
KID: まあ、ただ黒子が春香は無い!! っては結構、聞きますけどw
ドリ音: 人力ボカロ作ってた頃は、流行もひと段落したな〜とか思ってたんですけどね〜
KID: すいませんすいません……待たせてすいません!!!
tiara: でも結果として、一番いい時期に出せたんでしょうね。インデックス(の2期)が始まった時期だったのもうまい具合に勢いに乗れたかなっと。第一話テレビ放映と、ニコニコに第一話公開のちょうど真ん中でした。
敷居: ああ、なるほどなあ。それは確実に流れてきてるでしょうね。うむ、なぜ伸びたのか? の分析の話に入ってきましたね。このままの流れで行きましょう。
KID: まあ、音源を貰ったのが6月だったんですけど。
ドリ音: 7月か8月くらいに2期シリーズの話が聞こえてきて。
KID: そこらへんに上げられればなーってのはちょこちょこ話しては居ましたね
敷居: 結果的に一話のニコニコ公開直前に。
KID: まあ、時期的には完成したのがあの時期で出来て速攻、上げたから。露骨に狙ってたわけじゃあないんですけど。
tiara: もっと早く出す予定でしたしねw
ドリ音: まさかこの時期と重なるとは思ってませんでしたw
KID: ああいう静止画系の演出ってのは慣れてなくて、凝ろう凝ろうとしてドツボにハマっての繰り返しでした。
敷居: 動画編集はなかなか難産だったんですね。
KID: 難産どころか! 今までの自分の動画の中で一番もがいたと思います。7月、8月は真メドレーがあったので、その時はそっちに掛かりっきりになってしまったってのもありますね。
敷居: しかしそのぶん、結果はついてきてます。今回の動画は『ALRIGHT*』に変わる新たなKIDPの代表作と目されるのでは。

アイドルマスター ALRIGHT* (Sunflower Smile Mix)‐ニコニコ動画(9)
こちらも音:sitaP・絵:ekaoPとの合作。2007年からこつこつと地道に実力をつけてきたKIDPの本格的なブレイク作は何か? と問われれば、だいたいの人はこの動画を思い浮かべるのでは。

KID: そうであれば嬉しいですねw 両方ともこなしつつやれる合作でもなかったので(クオリティ的に)完全に頭から排除してそっちをやったわけですけど、結果的に真合作で培った技術がかなり今回の動画にも生かされてる事は間違いないです。
敷居: ふむ、過密スケジュールの作業になったけど、ちゃんとプラスに働いているってことですね。
KID: ですねー。
敷居: こういうと上から目線に聞こえてアレかもしれませんけど、KIDさんはリアルタイムに成長し続けてるのがわかる職人さんで、傍から経過を見ているのが楽しいです。
KID: まあ、動画に関しては現状で満足した時がその界隈からの引き際だと思ってます。常に新しい事をってわけじゃあないんですけど、やっぱり視聴者も同じことばっかりやってたら飽きると思うんですよね。なので、出来ることをさらに上手く昇華させていく事+その中に新しい事を取り入れるようには心がけています。
敷居: デビューからの経緯もね、2007年からずっとこつこつとやってきて、09年に本格的にブレイクって形ですからね。
KID: ん〜と……特に伸びる事目的にやってたわけでもなく、技術的にテーマを設けてそのラインに向けてずっと作ってたので。それが結果的にこうなったのかなってだけかとw
敷居: テーマを淡々とクリアしているうちに、結果が後から勝手についてきた、と。
KID: そうですねー。ただ、OP@Lって合作があったんですが、それは再生数を伸ばそうってもので。そういうのをやって、ああ数字取るのも面白いなーと。その結果出てきたのが『ALRIGHT*』です。

※Project OP@L
【iM@S】マスタースペシャルメドレー【Project OP@L】‐ニコニコ動画(9)

人力ボカロの下地にUTAUあり

敷居: こつこつ型といえば、ドリ音Pの人力ボカロも一朝一夕に上手くなるジャンルとはとても思えませんが。
ドリ音: 人力ボカロは、それまでUTAU*3を使ってたことで作り方が大体イメージできてたっていうのが大きいです。
敷居: やはりVOCALOIDやUTAUを使うことと感覚は近いんですか?
ドリ音: 使い方によると思いますよ〜。自分の場合、ほとんどUTAUの機能使ってなかったので。
敷居: 傍から見てると元から歌わせるためのソフトと声の完全な切り貼りじゃ別物なのでは、と思えてくるんですが……
ドリ音: UTAUは「歌わせるもの」というより「声を切り貼りするもの」だと思って使ってたので。オート機能のようなものは使ってませんでした。1つ1つの音を数ms単位で調整して。
KID: うわ……w
敷居: ははぁ……そりゃすごいな。
ドリ音: 無理やり「歌わせる」わけなので、歌ってる声を使っている人力ボカロの方が、人に近づけるという意味では使いやすいですねw
敷居: あー……まあ、確かに理屈上はそうなるのかもしれませんけどw
※追記
インタビューの後に興味持って大百科記事を読んでみたんですが、「UTAU」というソフトはそもそも人力ボーカロイドの支援ツールから発展して作られたものなんだそうです。そう考えると、UTAU→人力ボカロってラインはそこまで特殊例ってわけでもないのかもしれません。

正式名称は「歌声合成ツールUTAU」。人力VOCALOID支援ツール(WAVEファイルの切り張りツール)を基にして作られた実質フリーの歌声合成ソフトである。作者は飴屋/菖蒲(あめや・あやめ)氏(ニコニコ動画内では飴屋Pと呼ばれる)。

UTAUとは(ウタウとは)-ニコニコ大百科

人力ボカロの凄さはわかりやすい?

敷居: いや、なぜ伸びたのか? って分析を続ければ、人力ボカロって要因は外せないんですよね。ちょっと野暮な話ですが、人力ボカロの凄さってわかりにくいようで、実はとてもわかりやすいので。
ドリ音: 歌ってくれるっていうだけで嬉しくなりますw
KID: まあ、声だけでも普通に5万くらいは行ってたと思いますよw 人力ボカロはアイマス外の界隈も食いついてくれますしね。
敷居: 聞いてワンクッション置いた後に人の声を切り貼りしたものだと気付けば、誰でもちょっとまてすげーーー! と興奮できる。まあ、ドリ音さんの場合凄すぎてボカロやUTAUと勘違いされてる場面もよく見受けられますがw
ドリ音: やってることは音MADですね。
敷居: 元々歌ってる声だから切り貼りしても部分的にはボカロより歌ってる声に近づくこともあるんだってことを、僕はドリ音Pのロボキッスではじめて知りました。理屈としてはわかるけど、わかるけどほんとにやるのかよっ! と突っ込まずにはいられない部分がまたニコニコ向きでw

【人力Vocaloid】ロボキッス【やよい・亜美】‐ニコニコ動画(9)

ドリ音: 再生数は、もともとUTAUという小さな界隈出身だったから、20人くらいが毎日ループで見てるのかなーくらいに思ってました。
KID: そんなわけはないwww
敷居: そんなチリも積もれば理論はw
ドリ音: マイリストはとりあえず入れておいて、あとは放置、みたいなw
KID: まあ、音源だけでも伸びるってのは分かってたので。映像としては映像が前に出過ぎない、なおかつ声がより引き立つような作りを意識してますね。とにかく分かりやすく 派手に。ニコマス層みたいな玄人化してない人達に見せるには、それが一番ひきつけられますし見てて面白いと思うんですよね。
ドリ音: 実際のところ、外部の人にもっと見てほしい! と思える動画に声つけさせてもらってますよ。この動画、もっと他の人にも見てほしいな〜と。それでニコマスに興味持ってくれる人が増えればいいな〜と。
KID: 個人的にも今回好評だったのは嬉しいですね。アイマスでもやり方次第ではまだここまで見てくれるんだって実感できたので。
敷居: うん、ぶっちゃけるとニコマスは全体的な方向としてはとんがってとんがってガラパゴス化している印象はぬぐえないんですけど。
ドリ音: ガラパゴスすぎますねw
敷居: そのいうなかでも、こういうわかりやすくて、かつほんとに凄い動画がまだ出てきてくれるんだなーというのは、視聴者視点から見ても幸せなことですわ。
KID: 3Dステージってどんどんクオリティは上がってるんですけど、違和感を無くせば無くすほど一般にそこらへんにある映像と変わらなくなって行くんですよね……皮肉にも。
敷居: あーそれ、よくPさんから聞く話だなあ。
ドリ音: ニコマスは自然さを目指してるからw
KID: 後、それともう一つ意識したのは、こてこての静止画MAD風にはしたくなかったってのもありますね。静止画MAD自体は映像を細かく詰める方向に走ってるものが多いんですけど、Disるわけではないんですけどそれも程度が行き過ぎると「すごいけどわけわからない」で終わってしまう恐れがあるなーって。
敷居: わかります。アイマスMADな以上、「動く」ものにしたかったわけですね。
KID: ですです。
敷居: まあ、詰め込み型の動画も僕個人的にはけっこう好きなんですけど、実際のところ客層は絞られると思います。客層って表現もあれですけどね。視聴者層。
KID: 音を意識してバランス良くメリハリ付けて映像としての要素を限りなく絞ったのが、結果的に何度も見てもらえるものになったのではないでしょうか?
敷居: 派手に見えつつ疲れない動画を目指して、ある程度成功した実感もあるってことですね。
KID: ニコマスで言うとわかむらP風のあっさり構成にド派手な演出って感じですかね。

参考動画はガンジスP

敷居: その意味でいうと2分という短さも大きい。このように短い時間を複数人が一番得意な部分を組み合わせて作りこんだ合作というのは、この動画に限らずここしばらくの大きな流れの一つですよね。
ドリ音: 2分といえば、ガンジスPの動画を参考にさせてもらいました
KID: wwwwwwwwwwwwwwww
ドリ音: ほとんどアニメ版の長さで、1分半くらいなんですよね。
KID: あれは非常に参考になりましたね。
ドリ音: 1分半じゃちょっと短いかなーと思って2分くらいにまとめてるものを探したら、ガンジスPのが上手くまとめられてたw
敷居: え、ちょっとsm番号を
KID: sm9742275

エスパー伊東素材で【LEVEL5 -judgelight-】とある科学の超電磁砲‐ニコニコ動画(9)

敷居: ちょ、これかよwww
KID: 最初はもっとイントロが長くて、俺がイントロかアウトロのどっちかを削って欲しいって頼んだんですよね。
ドリ音: 音屋IRCでshort.verの話をしてるときに、皆であの動画見て、まじめに話するんですよ・・・凄くシュールだった。
敷居: ガンジスさんも思いっきり突っ込んでるしw

KID: 音屋の人たちはなんていうかストイックなんで、その手の話題になるとネタなんて頭に入らず没頭しますからねw
ドリ音: ところどころで我に返るんですけどねw
敷居: すげー光景だなあそりゃ。
KID: そしてドリ音さんから、エスパーかマギーを動画に入れるべき、と何度か言われましたねw

配役の理由

敷居: では合作の経緯、動画の受け取られ方、作ってる最中の意識などなど色々聞いてきたところで、そろそろ動画の具体的な内容についても聞いときたいなあと。
KID: ほいほい
敷居: これは元ネタと比較しながら見ていくべきなんでしょうけど、それぞれの役柄がえーっと……
KID: 千早=美琴

KID: 黒子=春香

KID: 佐天=美希

KID: 初春=雪歩

KID: ですね。
敷居: うんうん。で、春香さんに若干突っ込み入ってるとw
tiara: 悩みましたねw
KID: 千早は美琴固定は決まってて、初春もどうみても雪歩だったのでそこはすんなり決まったのですけど、黒子は該当するキャラが居なくて。
tiara: やよいとか伊織も候補でしたねー。
敷居: 佐天さんが美希ってのもけっこう意外性はありますね。天才に凡人の役をやらすとは、という。
tiara: 佐天は最初響という案もあったような
ドリ音: 響案ありましたね
KID: 響はもし他もキャプ映像を使う場合に代用が効かないので美希にしよう、という俺の勝手な事情からでした。
敷居: 黒子=春香については?
tiara: 春香にしたのはカップリング的視点からでしたっけ。
KID: アイマス的に考えるとはるちはっぽい位置づけでいいんじゃね? という感じで春香にw
tiara: 千早に抱きつけるのは春香くらいかなあって。あとりぼん?w
ドリ音: まあ定番ネタかなあと
敷居: おっけいおっけい、僕は納得した。大丈夫だ、問題無い。
KID: そこらへんはアイマス層を完全に意識ですね。かと言ってレールガンの側がアイマスキャラをそんなに細かく分かる事は無いだろうってのもあって。だからツッコミ入れたのはどっちも分かる層かなっと。
敷居: どっちもわかる層もたくさん見てるでしょうしね。
KID: まあ、そこがアイマス層にも楽しんでもらうっていう配慮かなっとw

絵作りの工夫、音作りの工夫

敷居: さて、で動画冒頭です。KIDさんらしい青系のエフェクトから、さっそくアニメーションしてますが。
KID: ほいほい
敷居: あれは担当tiaraPかな? コインをピンっと。

tiara: コインはじくところでしょうか、あそこはアニメのトレスです。
KID: 絵がてぃあらんで、それに俺がノイズっぽいエフェクトを入れたって感じですね。元はちゃんと肌色ですよw
敷居: ていうか考えてみたらここ手だけだからアニメそのまま持ってきててもよいのか。でも、トレスしてちゃんと描いてるんですね。
KID: まあ、アニメをそのまま持ってくると背景入っちゃうのでw
tiara: 今考えたら背景消すだけでよかったな・・・w
KID: まあ、俺もどういう使い方するか明確に決まってなかったから仕方ない。
tiara: 画質的な感じではトレスの方がよくなりますし、よかったことにしましょう。
敷居: 人力ボカロ音源も、全編凄いんですけど特に入りは半端ないですねー。自然すぎ。
ドリ音: いろいろ工夫してみました。
敷居: ほうほう、具体的にはどのような?
ドリ音: というかAメロBメロ、音が低すぎて無いんですよw
敷居: 音源になる声が無いってことですよね? ではどうやって。
ドリ音: 子音と母音を繋ぎ合わせたりとか、ピッチ調整して何とかかんとか、ですね〜。ようは1つの音を作るのに、複数の音を繋ぎ合わせてる……ってことです
KID: まあ、そこは聞いても俺でもわかんないので……というか敷居さんもわからんでしょうよw
敷居: 確かにわからんけどw でも「願いが今、目覚めてくー」のとことか普通にそのままの音源を持ってきてるとしか思えないのに。そうか、これ無いのか……。
ドリ音: 人力は、運ですから……たまたま綺麗に聞こえるような結果になることもあります。
KID: まあ某オフで爆音で流しても、自然すぎて聞いてる人の半数以上が人力って気がついてなかったくらいなので。
敷居: ははw そりゃそうなるかw
KID: あとから「え……あれ人力!?」 みたいな声が多数w
敷居: ていうか僕が最初にKIDPくんから音源聞かされたときもそうだったし。
KID: ですね。みんな素通りしてて。
敷居: お、レールガンじゃん。いいよねー、へー次はこれで作るんだーって。
KID: これ人力!! って言って初めてみんな気がついたという。
ドリ音: サビの部分は、本人が歌ってるのイメージしやすいんですよね〜
敷居: 「本人」って千早のことですよね。こういう歌い方をしそうだってのがイメージしやすいってことですか。
ドリ音: イメージ大事です……ロボキッスとか、そのまんまでしたね。
敷居: イメージしやすいってことが僕にはイメージできないのでどうにもこうにも。
KID: まあ、そこがドリ音さんの感性の部分なんでしょうねw
敷居: ドリ音さんの中で歌ってる声が聞こえてて、そこに近づけていってるってことなんでしょうが。
ドリ音: 基本は耳コピですけどねー
敷居: ふむふむ、ここは人力ボカロ経験者なら理解できるかもしれないとこなのかな……
ドリ音: んーと、ピッチは、これを聞いてもらうとわかるかな?
(※調整前の歌声? を流すドリ音P。)
KID: 吹いたw
ドリ音: うわさのサビですけど
敷居: こwれwはwww
ドリ音: ようは、音程のことです。ピッチというのは。
敷居: 音程を無理やり来させるわけですね!!
ドリ音: 音程さんにがんばってもらうわけです。
敷居: しかしこれ聞いた後に本編聞くと……音程さんが過労死しないか心配になりますね。
tiara: どうしたらあんなふうになるんだw
ドリ音: なんとかなっちゃいました。
敷居: 人力やっぱたいへんなんだなあ……
KID: んで、MIXってのは声を音源に乗せた時に違和感が無いように馴染ませると言うか。
ドリ音: 説明するの難しいですねw
敷居: 細かい技術については聞いても僕には理解できないと思いますけど、過去に「歌ってみた」ジャンルの人のミキサーが付く前と付いた後の動画を比較したことがありまして。全く別物になる、ということは肌で感じています。
KID: そう言う事ですね。最終仕上げで出来が変わってきますよーって事。映像でいうところの色調補正みたいなイメージを持ってもらうとわかりやすいかなっと。あ、じゃあ例になりそうなこれ送っておきます。


KID: 補正前と補正後。
敷居: ほほー! ぜんぜん違うなあ。
ドリ音: MIXは映像でいうエフェクトに近いかな。
敷居: エフェクトってのはこうやって、後からかけるもんなんですね。

敷居: 絵の話に戻ります。途中の絵は最後の集合絵から切り出してる? ……わけじゃないですね。どれも見たことのある絵面だけど、色々あるな。
tiara: 最後の1枚絵と、もう1個集合絵と、それから個別のアップ絵ですね。全部公式からのコラで作ってます。
KID: それを最初の集合絵から部分的に切りだしたりとかして、個別アップと組み合わせたり。
敷居: 一つの完成してる絵面を部分的に切り出してるのが多いですよね。
KID: まあ、使い回しですけどねw
敷居: 一枚絵を先に複数枚用意して、それをKIDさんが料理したと。
KID: ですです。少ない素材を効果的に。エロゲOPメソッドですね。
敷居: 総枚数としては、何枚くらい描かれたんですか?
KID: 10枚行くか行かないかだっけな?>てぃあらん
tiara: そうですねーそれくらいです
KID: 集合絵2枚とあとはキャラ個別。集合絵も背景と人物のレイヤーを分けてくれてたので、人物だけでも使えたのですよ。元の絵も解像度を大きく描いてくれたので流用しやすかった。アップ画面にしても画質が悪くならないので。
敷居: ははあ……それは元絵がどうなってあの動画になってるのかが気になってくるとこですねえ。
tiara: どんな風になって返ってくるかわくわくしながら待ってましたw
KID: まあ……期待は裏切ってないかなっとw

動画作成の思い出:KIDP

敷居: それぞれの担当で一番苦労した点、もしくは思い出深い点などがあれば聞きたいです。
KID: じゃあ、俺から言いましょうかw
敷居: そーとー難産だったってのは既に聞きましたけど。
KID: 技術的にはそんなに難しい事はしてないですしエンジン掛かってからは制作早かったんですけど、音と改変をどうやって双方を生かす構成にするかって点がやっぱり苦労しましたね。
敷居: ふむふむ。
KID: 掛かった時間は構成考えるのに95%、制作に5%です
tiara: www
KID: まあ、要するにずっとPCの前でAE触りながら唸ってた時間が大半って事ですね。下手なものは出せないってプレッシャーから最初は凝ろうって結構小難しい事やってたんですけど、見返してみたらただの分かりにくい動画になってきたので……全部、破棄してシンプルに作った結果がアレです。
敷居: 難しいことをやってた時間が大半、そこで開き直ってシンプルにわかりやすい動画にしようと決めてからはあっという間だったってことですか。
KID: そうですね。思い出深い点としては、3人で改変キャラどうのこうのとか構成をどうしようかとか話てる時間は、本当に楽しかったですね。
敷居: ああ、そりゃ一緒に作業することの醍醐味でしょうねえ。。
ドリ音: 自由に作ってもらおうと思った割には、注文付けすぎたかな? と心配でしたけど。
KID: いえいえ。あれくらいこだわりを持ってもらってた方がこちらも遣り甲斐ありますし! でも注文といっても、MMDはNGってのと再現アニメはしないってくらいじゃなかったですかね。
ドリ音: 静止画メインで行きましょうか、というくらいに落ち着きましたっけ。
敷居: ほほー。
KID: サイバー演出中心+静止画 で落ち着きましたね
敷居: どっちであってもウケたとは思いますけど、それはもうたくさんあるからあえて避けた感じですか?
KID: MMDについてはドリ音さんから話した方がいいかなっと
敷居: ふむ、わかりました。ではドリ音P。
ドリ音: あれ、あまり記憶にないw
敷居: ちょw
KID: 個人的にMMDは人力に合わないと思う って言ってたじゃないですかw
ドリ音: どっちも作り物だと、劣化の掛け算で悪く見えるんじゃないかなあと。互いに悪い部分を目立たせてしまうかな〜とは思ってました。
KID: そういう意向もあって自分もそれには同意って事でMMDは抜きましたね
敷居: なるほど。
ドリ音: 映像で何とか不自然さを補完してもらうつもりだったのでw

動画作成の思い出:ドリ音P

敷居: ではそのドリ音さんはどうですか? 何か思い出深い点などは。
ドリ音: 思い出深い点……音選びの方法を変えてみたことですね。素材となる曲を絞ってみました。
敷居: 素材を絞った? 広げたんじゃなくて絞ったんだ。
ドリ音: 声質って曲によってバラバラなんですよね。
敷居: はい、それはわかります。
ドリ音: それを繋げると、凄い違和感になるんですよ。だから今回は最初に蒼い鳥だけで作って、その後で違和感ある部分だけ他の曲から素材を用意した、という感じです。
敷居: え? 最初蒼い鳥だけって……そんなこと可能なんですか。
ドリ音: 最初は1曲だけでいけるとは思ってませんでしたけど、曲の相性が良かったんでしょうね〜
敷居: てっきり人力ボカロってありとあらゆる声素材を用意しまくって声を発掘するところから開始なんじゃないかと思ってたんですが……まあ確かに、使う曲の種類は少なければ少ないほど自然に近づくのは道理ですね。以前別のインタビューでゆりあさんが言っていた、ダンスを組むときはできるだけモーションを取ってくる極の種類を少なくしたほうが自然になるって理屈と同じか。
ドリ音: ですね〜
敷居: 僕の勝手なイメージだと、あれだけ自然に聞こえるからには一音一音単位じゃなくてセンテンス単位で同じ言葉を歌ってる部分を見つだして調整しているに違いないとか、そんなことを考えてたんですけど、今の話を聞く限りんなわきゃないと。
ドリ音: 理想は1音単位ですね。劣化少なくなるし。
敷居: あー、むしろ1音単位のほうが理想なのか。僕の想像的外れすぎるなw
ドリ音: 音の切り替わりは単なるクロスフェードです。音程合わせておかないと、綺麗に移り変わってくれませんけど、そのへんはUTAUで慣れてたので。
敷居: 僕が思っていたよりもず〜っと細切れのものを組み合わせてできていたんですねえ。視聴者はそこまで細切れのものを組み合わせてるっての、わかってないんじゃないかなあ。
ドリ音: わからないように作りますからねw 1音でも、ものが無ければ10個くらい音を繋いだりしてます。
敷居: ほとんど蒼い鳥でできているとか、言われなきゃんなもん、わかるわけありませんよw
ドリ音: まあ細かい話になるとキリが無いですけど、歌ってくれれば、それで満足ですw
敷居: はい、まあそういうことで、インタビュー読者も知られざる人力ボカロ作成行程の一端を垣間見れたのではないかと思います。

動画作成の思い出:tiaraP

敷居: tiaraPはどうでしょう? 特に思い出深い点、苦労した点などがあれば。
tiara: そうですねー。アイマスではないものをアイマスにするというか、アイマスと、アイマスではない世界を融合させるというか。
敷居: うんうん。
tiara: 公式ではできないコラボレーションを自分でやっちゃうっていう点では人力とアイコラってすごく似てるのかなーと思いました。両方のイメージをそのままに残して中間点を取るというところは結構気を使ったかなと思います。
敷居: それが見たい、だから無理やりだろうがなんだろうが作っちゃう。
tiara: ですですw
敷居: 完全にどちらかに傾くと合わせた意味ないですもんね。
tiara: 頭身が違ったり絵柄も全然違うので……上手く折り合いをつけさせるのは苦労したところかな? と。この音源のイメージを崩してはいけないと思ってw
敷居: そういう意味では、特にわかりやすいのはラストの一枚絵の破壊力ですねえ。あれはすさまじかったなあ。

tiara: あれは一番最初に作ったものですねー。意外と時間がかかりました。
敷居: 顔は全くアイマスのままだけど、どうみてもレールガン!
tiara: 顔をくっつけるだけではなくて、トレス部分も塗りをアイマス風にしたりとか、描き方も少しアイマス風に変えたりとかしてます。雪歩がほとんどなにも試行錯誤せずにぴったりはまりすぎていい子でしたw
敷居: あの雪歩の頭の花、むしろ初春より自然に見えるかもw
tiara: 一番しっくりくるキャスティングだったと思いますw
敷居: あ、そう考えるとある意味失敗してるかもしれませんね! 雪歩に似合いすぎて初見で初春に感じるはずのあの圧倒的な突っ込み力は再現できていないw
tiara: www
敷居: お い そ の 花 は な ん だ というあれが。
KID: 非常に良い人材をヘッドハンティングしたな と改めて思いました まる

視聴者に一言

敷居: では最後に、視聴者さんに何か一言。
ドリ音: 動画見てもらってありがとうございます。落ち込んでるときに見て気分が晴れるようなものを目指してるので、これからもよろしくお願いします。
KID: アイマス好きもレールガン好きも双方が楽しめる動画になっていれば幸いです。まだまだ精進して視聴者が楽しんでくれるような動画作りを目指して頑張って行きます。
tiara: これって公式!? って一瞬でも思っていただけたら嬉しいです。公式のようで公式ではないものを、これからも作っていきたいと思います!
敷居: はい! というわけで、今回はドリ音P・KIDP・tiaraPのお三方に色々とお話をうかがいました。長時間のインタビューにお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

*1:テラレールガンすぎる改変絵

*2:歌詞職人が淡々といい仕事をして、原作コメントが無邪気にガンガン流れてくる。これぞニコ動の醍醐味だ。

*3:VOCALOIDの同人版のようなもの。当然商業ソフトであるボカロよりも自然に歌わせるのは困難と思われる。