多様化/拡散/定着 -2009年上半期・アイマス動画ベスト20-
(※引用:アイドルたちの念能力バトル4*1)
今年もいつの間にやら7月になり、半期に一度の総決算『上半期20選』の季節がやってきました。
ブロガー・動画投稿者・視聴者の分け隔て無く半期分のオススメ動画を最大20個挙げる(※なんと今回は動画で参加してる人が……→弓削のニコマス20選(2009年上半期))というこの企画も、既に第3回を迎えすっかり定番となった感がありますね。僕も今のところ皆勤賞ですぜ。
参加者まとめおよびレギュレーションは以下よりどうぞ。
温泉卓球場 2009年上半期ニコマス20選ポータル
基本レギュレーション
温泉卓球場 2009年上半期ニコマス20選レギュレーション
・対象は2009年上半期(1月1日〜6月30日)に公開されたニコマス作品
・自身のセレクトを20作品以内でブログ及びマイリストにて公開
・1Pにつき1作品
今年はどんな上半期?
今回選んだ動画の内容を前回、前々回のチョイスと比較してみると、かなり大きく世界が変わった印象を受けます。もちろん僕の好みの変化のせいってのもあるでしょうけど、たぶんそれだけじゃない。
「ニコマスの多様性は凄い」ってのは僕もかなり以前から何回も書いていることで、例えば架空戦記や教養講座が広がってるときにリアルタイムで↑のような記事を書いてたりするわけですけど、「新しいものが広がりはじめた」段階と「拡散しきって定着した状態」ってのはまた違うと思うんですよ。中心があってそこからポロポロと派生が出てくるんじゃなく、当時は新しかった様々なものが、今は既に定着して全て横並びの状態になっている。そんな感触があります。
また、ナムコ公式の動きを見ても、アイマスSPの発売・ニコニコ動画にアイドルマスター公式チャンネルが出現・DS版およびアイマス2の発表と大きなニュースがたくさん。これがニコニコ動画の客層や動画内容に与える影響はむしろこれから本格的に出てくるのでは。
良くも悪くも、この世界は変わった。きっとこの先も変わっていく。今回はそんな予兆を強く感じさせる上半期でした……と、先に簡単な感想を述べてみましたとさ。
では、数も多いのでちゃちゃっと行きましょう。ベタベタなチョイスになってもいっさい気にしないあたりは例年通りなのでヨロシク。最近見る数がちと減ってアイマス動画系の紹介記事率落ちてますが、さすがに半期ぶんのベスト20なので見てガッカリするような動画はまず皆無かと!
サムネだけじゃなくトップの画像にも動画へのリンク付けました。見出しの作者名から作品リストへ飛べます。あと今回は紹介数が多いのでアカウント無い人向けの外部プレイヤーを別エントリに格納しました。半期に一度のまとめなんだから、めんどくさがらずに出来ることは全部やっておこうということで。
■2009年上半期・アイマス動画ベスト20の外部プレイヤー
1.『彼女たちのsign。Re:』/amu + IKKI +メイP(合作)
まず一発目は「印象的な画面デザイン+ストーリー性」という強力な武器を手に、今も僕らの胸のど真ん中を射抜き続けるメイP作のPV動画から一本。
実はこの動画、ミスチル音源が権利者削除に引っかかり投稿間もなく削除されてしまい、ほんのしばらくの間しか公開されなかったにも関わらず(いや、だからこそ)伝説の亜美真美動画の聖地として語り草になっていた作品が打ち込み+歌ってみた職人との合作によって不死鳥のように蘇ったもの。*2ちょいとセンチメンタルだとは思いますが、そんな経緯も含めて一遍の物語のように感じてしまうのは僕だけではないでしょう。
まるで彼女たちのこの笑顔に何百もの意味が隠されているかのような、そんな印象さえ感じるのです。
2.『コミュMAD アイドルマスターヤヨイ 『借金』』/オンセンロボP
2つ目はうって変わってコミュMAD。
やよいの音声とアニメ「カイジ」の音声を繋ぎ合わせて短編のストーリーを捏造したまさかのフルボイス作品。なぜか聞いてるうちにちゃんとストーリーが理解できて普通に会話してるように聞こえてくる不思議。
実際見てるうちにやよいがかわいそうになってきちゃって、後半伊織と春香が乱入して一気にドタバタ臭が強くなった瞬間素で安心してしまう自分に気づいたりして。いつの間にかストーリーに乗せられている証拠だね。
人力ボーカロイドも、ストーリーものに凝った演出を加えた動画も、近いところでMADアイマスプロデューサーシリーズにもすごいものはたくさんある。でも少なくとも僕はアイマスのコミュを使ってこんなことを実現した動画を他に見たことが無い。
3.『イエスノウ』/ゆみすP
分類としてはオーソドックスなダンスPVで玄人好みの一品……というには、少しインパクトのありすぎる動画。
冒頭10秒も見て、ダン・ダン・ダン! という強めに聞こえるドラムの音に合わせて動くカメラ・キャラ・エフェクトを感じれば、これを「地味」と表現するのはそうとう難しいってことが理解していただけるのではないかと。
シンプルな演出・エフェクト+原曲の重低音=ド迫力。派手さというのは一見した雰囲気だけで決まるものではないということがよくわかる作品です。
4.『いけPの○○ランキング』/いけP
27時間新年会より一発目。あの企画は気合入った動画多すぎたので、おそらく他の方の20選でも鬼門となっていることでしょう。
ランキングとありますが実際にはニコニコによくあるようなランキング動画ではなく、歌ってみた職人としても活動しているいけP本人がDJをつとめベストヒットUSAをパクパロった番組を捏造した動画です。
その脚本の面白さ、いけPのMCの異様なまでの流暢さ、間にほんの少しだけ入るPV・ネタのこりよう、さらにはCMに入るタイミング、その内容に至るまで……まさに良く出来たTV番組。TV風に番組表を作って27時間放送しっぱなしにするという新年会の企画に、これほどふさわしい動画もそうはないでしょう。
僕はこれをきっかけにいけPの他の動画もチェックするようになったんですが、まあこれが面白いんだわ他のも! 掛け値なしにアイマス新年会最大の収穫の一つ。
5.『Do-Dai[CyberC Reconstructed]』/orgoneP + fftq氏(合作)
アイマス+ジェームズ・ブラウンという異色の組み合わせでデビューして以来出現するたびに僕らの度肝を抜く個性を放ちつづけるorgonePと、最ベテランの音系職人で癒し系リミックスの大家であるfftq氏の二人が手を組んだ異色の合作動画。
アイマス公式音源の人気曲『Do-Dai』を元にした脳みそをとろけさせるリミックス、音に合わせて繰り返しを貴重としたハイクオリティな映像が絡み、強烈な電子ドラッグが完成しています。視聴者は雪歩の表情・動き・音がサブリミナルのように脳髄に刻み込まれる感覚をはっきりと味わうことができるでしょう。
6.『No,No,works.【アイドルマスタ−/テクノでコント】』/機能美P
一時期のニコニコ動画を席巻したKineticTypography(タイポ演出。参考→最近ニコ動でモーショングラフィックスが注目され始めてる?)。それを初音ミク+アイマス+タイポ演出=お経のPV(→舎利禮文)という異色の作品で爆発的に知らしめた人物が機能美P。そんな彼が、今度はほぼ文字演出のみによるコントに挑戦した作品がこちら。
タイポグラフィの美しさ・コミカルでテンポのいい展開……そして、前フリを忘れたころにやってくる見事なオチ。きっとあなたもクスリと笑って「やられたな」という気分にさせられると思うので、是非最後まで見ていただきたい。
ちなみに、多数のMADで活用されてるのでご存知の方も多いかと思いますが、アイマスキャラの影絵も「M@STER FONTS」というえこP作のオリジナルアイマスフォント。このようにユーザーとユーザーの仕事が絡み合って新しいものが生まれてくるのは、動画共有サイトの醍醐味のひとつですね。
7.『シャララ』/慈風P
アイマス新年会ラストのアンコール3作品より。
「もう慈風Pが何をやっても驚けないだろう」と、思ってたら毎回驚かされてしまうのが慈風Pクオリティ。
自作ステージどころか自前で街作っちゃうんだぜ。
そのうえ空から妖精みたいにアイドルが降りてきてオールスターで踊りだすんだぜ。
なんなのこのひと!
8.『「乙女よ大志を抱け!!」 IM@SALLSTARS?』/傭兵P
CD音源の春香さんの新曲を元とした手描きイメージPV。イラストの魅力・音源の雰囲気とのマッチ具合は誰もがひと目見れば納得する内容です。
ちょうど時期的に最も最初のお試しターゲットにされやすい位置に立ったからとはいえ、ニコニ広告累計ランキング不動の第1位の座は伊達じゃありません。「デビュー作で皆にあんなお金投げられてしまったらプレッシャーきつすぎてかわいそうだよ」という意見もあるので、是非近いうちにまたお目にかかって安心したいところ。
9.『“Dream Fighter” (IM@S EDIT)』/itachiP
ニコマスには、『七夕革命以降』というターニング・ポイントがあります。ブルーバックコマンドが発見され、全編を切り抜いて別ステージで踊らせることが比較的簡単にできるようになった後、それをどう使うかに様々な人が苦心してきました。「いくら自由にできるからといって、あれだけ完成度の高いアイマスのステージに比肩しうるものはそうそう用意できない」という声が多方面から出たりね。
この動画は、それに対するitachiPのひとつのアンサーと見ることができそうです。
あえて黒一色の背景*3からはじめ、ステージに戻ってきた瞬間の感動を際立たせるという逆転の発想*4。見ていただければわかると思いますが、ステージが出現した瞬間ゾワゾワ! っと寒気が来まっせ。
そしてそこから繋がる思い出ボム・静止画でダンスを切り取るという発想……途中からはもう、圧倒されっぱなしで最後まで連れて行かれます。
10.『ほめ☆すた』/ソラユニP
- PS3で春香さんが大変なことに(ホメ春香出現時のレポート)
ホメ春香殿堂入り(10万再生オーバー)作品。ちなみにもう一つの殿堂入りもソラユニPである。自重しろ。
まさにどこをどう切っても濃厚120%ホメ春香な動画。ホメ春香ファンなら必見、というよりファンじゃなくても無理やりファンにさせられそうなパワーです。
どの場面を抜いてきても色んな意味でクオリティ高すぎてどうしよう。そしてこの動画でMMDのけいおんモデルのかわいさを知ってしまった僕はどうすれば。
見終わったらおわびの澪GIF動画も見に行きましょう。
11.『サンデイ』/タクヲP
iM@SMSC3*5において「決勝でも前フリ」という恐ろしい博打をかまし優勝をかっさらっていった作品の完成版。
最初に紹介したメイPもそうですけど、アイマスキャラクターの表情や動きにさまざまな意味を付与してしまう(視聴者も付与してると思わされてしまう)動画職人というのがおられます。タクヲPもその最たる例のひとつでしょう。いやね、別に閣下っぽく半目になってるとか睨んでるとかじゃなく、普通に微笑んでる表情がなんか怖いんですわ。
この動画のワンカットごとの春香さんの全身から伝わってくるものは、本来は「怖さ」ではなく「凄み」と表現するべきなのかもしれませんが……けして動画の魅力を損なっているわけじゃないし。
ところで、実はこの動画については「確かに超期待させる導入だけどこれで優勝しちゃって単品出なかったら……つうかそれなりの規模の企画の決勝を包囲網に使うとかいいのか、お前ら本当にそれでいいのか」と内心文句タラタラだったのに完成版見た瞬間「ほんとすいませんでした」と一人で悶絶してたという経緯があったりして……って経緯も何もブログにゃ一行たりとも書いてないことなので今が初告白なのですが、こないだトカゴ2でその話本人にばらしちゃったしもういいや。
12.『765〜封鎖された渋谷で〜』/哀川翔P + しかばねP(合作)
ストーリーもの動画の合作企画『シネ☆MAD 2nd』*6で発表された、名作との誉れ高いコンシューマノベルゲーム『428』のパロディ作品。僕は原作をプレイしたことないのだけど*7、これは間違いなくとんでもない再限度なんだろうってのがひと目でわかるクオリティ。
ジャンルで言えばノベル作品。確かにノベル作品なのだが……誤解を恐れずに言えば、これはストーリーを「読む」動画ではなく、演出を「見る」動画だろう。
基本実写の街中*8を3Dのアイドルが自然と溶け込んでストーリー展開していくわけですが、まずもってこのへんからおかしい。単純に合成しただけではこうも自然に見えるもんじゃないでしょうし。OP・EDのクオリティは言わずもがな。長い動画をあえてザッピングごとに細切れにする原作リスペクトな演出も面白い。
シンプルでコミカルなストーリーラインをグイグイと引っ張っていく怒涛の演出連発に、きっとあなたも時間を忘れて没入するはず!
13.『「Cagayake!GIRLS」 けいおん! OP』/あみまみれP
最初に「世界が変わった」という話をしましたが、「好きな曲で気持ちいいダンスMADが見たい」という需要は、今でも十分に強いものです。その最たる例のひとつが、今期の人気アニメ「けいおん」楽曲で作られたこのMAD。「安心のアイマス職人」というタグが、色々と象徴的です。
まあ相変わらずといっても、当たり前のように4人で踊ってるあたりが時代を感じさせますが。
こういう動画の何が強いって、なんせ飽きにくいこと。自分の好きな曲で、まるでそのためのダンスであるかのように綺麗に踊っているMADはいつ見ても退屈をしないのです。しーなPのプリンセスブライドが今ああいうポジションになってるのは、けして工作云々が主要因ではありません。
15.『【世界でいちばん頑張ってる君に/HARCO】』/つかP
今期の春香さんソロMVPはこれ!
先頭から終わりまで、頭の先からつま先まで、画面の至るところにまで春香さんのかわいさが詰まった動画です。男性ボーカルの好きな子を優しい視点で眺めているという歌詞に合わせた淡い色調が没入度を……
16.『イオリキラリ』/えびP + ベホイミP
僕が見たアイマスSP使用のMADでは今のところこれがピカイチ。
えびPお得意のライブ演出とベホイミPの極まった声弄りが絡み合い、なんとも言えないくぎゅううううな空間が出現しております。罵倒ソロってなんだよ(笑)。
それほど長い動画じゃない上に展開が目まぐるしく変わるので飽きるってことはあまり無いでしょうが、最後のオチがやたらとかっこいいので途中で閉じないように注意。
17.『悲しみよこんにちは ニコ春香さん』/製作者不明
ニコマスPのデビューから引退までをテーマとしたPV作品。『ニコパラ』しかり『GAME』しかり、ある程度成熟した文化には、必ずこのように自己言及をはらむ作品というのが出てくるものです。
ネガティブな内容ではなくポジティブに行こう! って感じで締められているのですが、それでも全編に渡ってセンチメンタルさが溢れた動画であることも確かなので、そういうのがたまらん人は是非どうぞ。
また、ニコマスコミュニティとしての「Twitter」がこういう動画のストーリーに組み込まれたのもたぶん初でしょう。作った人誰だか知らないけど、本当に引退したのかな……?
18.『im@s side story』/iM@SSideStory製作委員会
アイドルマスターでミュージカル(ウエストサイドストーリー)を再現した動画。えー? ほんとかよ? って思われるかもしれませんが、ほんとほんと。ミュージカルやってるよこれ。
物語はあまり仲の良くないとある二つの高校の演劇部が競演をすることになった、という説明からはじまります。元ネタのウエストサイドストーリーそのままじゃなくモチーフにしたオリジナルの脚本を担当のtloPが書いているわけですね。
読みやすく・かつそこらのノベルゲームより凝ってる文章の出し方に感心して「へえ、面白いノベル作品だなあ」と思いながら読み進めてたら……
出会う二人・差し伸べられる手・そのまま当たり前のように始まる歌とダンス。
うおやべえ完全にミュージカルだこれ!!
19.『WAKAMURA RECYCLE VOL.03 (Dance! Dance! Dance!』/わかむらP
あちらこちらで既に指摘されていることですが、わかむらPの本当の恐ろしさは作品単体よりもその製作ペースでしょう。最近RidgerPの新作が出て「王の帰還」なんてタグがついてましたが、普通ホームラン級の作品をカッとばすような製作者のペースってのはそんなもんです。見れたらラッキー。でもわかむらP常にいるよね。しかも安打製造機ならぬ長打製造機でたまにホームランかっとばすという反則さ。
そんなわかむらPの特性が最も生かされるのが、定期的に発表されるわかむらP個人作品のメドレー『WAKAMURA RECYCLE』でしょう。この豪勢さ! 過剰さ! これこそがわかむらPの真骨頂!!
単品だとそれほど印象深くなかった作品までもがメドレーに入ると良くみえてくるのも、おそらくは偶然じゃないでしょう。どうやら彼はあらかじめメドレーに組み込むのを考えた上で「単品を先にシングルカットして見せている」という意識で作ってるようなので。
20.『ニコニコメドレー feat.皐月Project』/合作
最後は、『全てのニコニコ動画を愛する人へ』がキャッチフレーズな合作メドレーで〆ましょう。
次から次へとニコニコで聞いたことのある楽曲・見たことのある動画のリスペクト映像が流れてくる。ニコマス版組曲/流星群/7色って感じの作品になっています。
- ニコニコを愛する全ての人へ(個別紹介)
紹介作品リスト
*1:20選には選んでないけど、むちゃくちゃ面白いよ!
*2:ニコニコはJASRACと包括契約結んでいるので、JASRAC管理曲の演奏・歌ってみたは基本引っかからない
*3:実際のとこ黒一色の時点でも十分惹きつけられる内容なんだけど
*4:というか、「アイマスのステージは強い」という前提から考えればある意味一番ストレートな解法なのかもしれませんが
*5:動画を短い時間に区切って公開し、投票で選ばれた動画だけが次々と勝ち抜いて続きが公開されていく企画
*7:『街』はやった。こっちもむちゃくちゃやりたいけどプラットフォームがWiiなのがなあ……ん? 移植されるってマジ?
*8:全部現地ロケだそうな!