「ヒロイン攻略」は目的ではなく、過程 - 『リトルバスターズ』

B001DXD9GAリトルバスターズ エクスタシー 通常版
KEY 2008-09-26

by G-Tools

個別シナリオ全てクリアしてトゥルーエンドに到達しました。たぶんエクスタシーでの追加キャラを除いた元シナリオはこれで全部終わったことになりますね。


うん、期待通り……いや、期待以上かな。それまでの全ての個別シナリオが綺麗にメインシナリオに収束していく感じで、とても気持ちよかった。最後にそれまで通りのごくごく普通の掛け合いをしているキャラクター一人一人の顔を眺めて感じる多幸感はかなりのものがあります。
てっきり鈴がメインヒロインだと思ってたけど、これは違いますね。このゲームにメインヒロインは存在しない、あるいは登場人物全員合わせた「リトルバスターズ」がメインと言ったほうがいいかな。一人の人物に話が収束していくんじゃなくて、全員合わせた関係性が主という感じ。
これは『複数ヒロインを攻略していく』という形式にある程度縛られてしまうギャルゲやエロゲではあまり見られないもので、なかなか新鮮な体験でした。もちろん話の展開上もっともメインヒロインに近いのは鈴には違いないのだけれど、主人公が誰とくっつくかなんてことはこの物語全体にとってはそれほど重要な問題ではない。むしろおいしいところを持っていくのは友人の男キャラ……というのはまあ、公式のゲーム紹介を目にした時点である程度予想の付くところではありましたが、期待を裏切らずにやってくれてます。


あと、今回はテーマが家族じゃなくて友情とか仲間とかそのへんだったわけですけど、個人的にそっちのほうが好みなのでありがたかったですね。青春ものはやっぱ良いです。
KEYのゲームなら定番の、少し意地の悪い言い方をすればあざとくて泥臭い泣かせ展開は今回も健在*1なのですけど、それが「家族」や「かわいそうなヒロイン」ではなく「仲間」にかかるとわりと抵抗無くするりと飲み込めるのだから不思議。そのぶんエロゲ特有の抵抗感や嫌悪感がドロドロとまぜこぜになった妙な化学反応は無くなってしまっている、とも言えるけれど。
きっちりと伏線を積み上げてまとめきった、するすると飲み込めるさわやかで手堅い印象のシナリオでした。


難を言えば、ボルテージが上がるまでにちょっと時間がかかりすぎるという点でしょうか。
それぞれの個別シナリオも全くつまらないというわけではないのですけど、メインシナリオに比べるとやはり多少は我慢して読み進めた印象はぬぐえません。特にクドシナリオは単品として読み進めるにはまだプレイヤーが知らない事実の割合が高すぎたと思う。
もっとも、こういう大作ノベルゲームにはメインに入る前に大量にテキストを積み上げることで生じる効果というものがあるので、それを一概に短所とも言い切れないのですが。それにこれは特にこのゲームのみの問題というわけではなく、たいていのノベルゲームが多かれ少なかれ持っている特長でもありますし。後のメリットとその場のデメリットとのバランスの問題なのでしょう。


一般ゲーからエロゲーになったわけで、肝心の追加エロシーンについては……まあ、それはね。あくまでおまけ程度に考えればいいかと。展開上自然になるところ以外に無理やりエロシーン入れる気全く無し! って感じなので、全員にエロがついてるわけでもない……と、最初は思ってたけど、一週目は無理で後でシーン回収でもう一回行くと追加されてたりするみたいですね。
まだエロゲ版追加キャラはクリアしてませんけど、現時点でエクスタシーじゃない版躊躇せずに手を出してても良かったかな? と思わせられるくらいには面白かったです。


……ふむ、この日記でこんなに真面目にエロゲの感想書いたの初めてかも。

*1:基本浪花節の世界だよね