ニコニコ動画で物語を綴る者たち


今、ニコニコの「iM@S架空戦記シリーズ」がとんでもない広がりを見せている。

これは有志が用意した第1話のみを集めたマイリスト。数えてみたら、65シリーズもある。数話程度で終わるものも含まれるようだけど、iM@S架空戦記は基本的には数十話と続くのが普通。この時点でこれは何やら凄いことになっているぞ、というのは伝わると思う。
ここ数日複数の人からお薦めされたシリーズを連続で見続けていたのだけど、僕もまさかここまで拡大しているとは思っていなかったので本当に驚いた。ここまで来るとアイマス動画の中の変わり種といったポジションではなく、れっきとしたジャンルだ。


ニコニコ動画ではこの一年間、動画や音声を加工する技術を持った職人たちによって約2万もの作品がUPされてきた。ニコニコでアイマスと言えばMADだと思われるだろう。だが本来MADというものはそこまで巨大なジャンルではなく、二次創作と言えば同人誌、ネットならSS……つまり、ファンの溢れる妄想で形作られた物語を綴ることが主流だったはず。
ニコニコのアイマス動画を見ていると、キャラクターの属性がファンの妄想によってどんどん深まり、元キャラの特徴を持ちつつけして元のままではない一種のお約束とも言えるキャラがファンの間で形作られていく様を見ることができる。これは例えばKanonの秋子さんが腹黒キャラと見なされたり、月姫の秋葉の胸のサイズが異常に強調されてネタにした二次創作が多数発表されたことと全く同じ流れだろう。そう、ここまで段階の進んだオタクコンテンツがそのような消費のされ方をしないわけがない。
もちろん、既に同人誌もSSも多数発表されている*1だろうけど、現在一番巨大なアイマス二次創作の発表の場といえば間違いなくニコニコ動画アイマスファンのうちMAD職人ではないネットの文章書きたちは、ニコニコ動画に参入する機会をずっと伺っていたんじゃないだろうか。そこにiM@S架空戦記というおあつらえ向きの入れ物が現れたことで、堤防が決壊するかのように流れ込んだ。今の尋常じゃない勢いを見ていると、そう思えてならない。


だから初期の頃はともかく、今となってはおなじみのキャラを使って妄想を広げることこそが重要なのであって、「架空戦記」であることはあまり重要じゃないんだろうな、と思う。
いや、だって見て下さいよこれ。
ニコニコ動画(RC2)‐【アイドルマスター】 奥州風来記 第04幕

完全ノベルゲームじゃないですか。
この「奥州風来記」は一応「太閤立志伝Ⅴ」のプレイ動画ということになっているのですが、プレイ動画部分はほとんどありません。何のゲームを使っているかなどということは、ほぼ意識されてないでしょう。
ニコニコ動画(RC2)‐【アイドルマスター×太閤立志伝V】伊織幻戦記第四回

それどころか、この「伊織幻戦記」などは作者自身が「紙芝居オンリーだからiM@S架空戦記タグを付けないでくれ」と要求してたりします。まあ作者の自由だけど、僕は付けてもいいと思うけどなあ。もうiM@S架空戦記は「ゲームのプレイ動画を元にする」ということ自体あまり重要ではなくなってる。まあ、ゲームのプレイ動画を上手くストーリーに組み込んでくれると動画に起伏が出てさらに面白くなるのは確かなんですが。*2


そういう意味では、iM@S架空戦記の元祖は「閣下で三国統一」じゃなくて「春香たちの夜」なのかもね。
ニコニコ動画(RC2)‐閣下で三国統一を目指してみる1 OP【アイドルマスター】
ニコニコ動画(RC2)‐【アイドルマスター】 春香たちの夜 予告編

*1:参考:http://imasss.web.fc2.com/ss.htm

*2:ただそれを上手く出来る人は希有な部類。その場合は、組み込まないほうがむしろ良い