「表情」で見る春香イメージの変遷


春香さんが衣装で悩んでるそうです

「没個性」と言われ「正ヒロインなのに不人気キャラ」という立場に甘んじていたのも今は昔。現在のニコニコのアイマス界隈ではもはや一番人気と言っても過言ではない*1春香さん。その特徴の一つに取り上げられる表情の多彩さがあります。春香メインのMADを見てると用意されてる表情パターンの数が他キャラの何倍もあるんじゃないかと思えてきません? いや、錯覚なんだろうけどさ。
今日はそんな春香のイメージの移り変わりを、動画と共に「表情」に着目して紹介したいと思います。


画像多いので「続きを読む」記法発動。

没個性から黒春香へ

まずは「没個性」からの脱却。「黒春香」と呼ばれる元となったこわーい表情から。

はい、普通に怖いですね。元々アーケード版やラジオで黒春香の原型となるイメージはあったらしいですが、ニコニコで黒春香がブレイクしたのはやはりここらへんの表情が何度もクローズアップされたことが大きいでしょう。
「脱却」と書きましたが、元々「没個性」「音痴」というのもネタとして消費されてたもので、ネガティブなばかりのものではなかったんですよね。黒春香というのは、むしろそれまでのイメージの発展系だと思う。


で、この手の怖い表情はさらにどんどん進化します。

めちゃくちゃ怖いです。最初のナチュラルに怖いのを超越してえらいとこまでいっちゃってますね。
ところで「繪里子ーッ!俺だーッ!結婚してくれー!」で有名*2なこの「I Want」という曲、「そこに跪いて」*3というフレーズといいロックな曲調といい黒春香にぴったりでよく見つけてきたもんだと思われるかもしれませんがこれ公式曲です。MAに付いてくる春香の新曲。「中村繪里子」ってのが春香の中の人の名前ね。
実は僕この事実けっこう最近まで気づかなかったんですよ。ああ、すげえぴったりだから何個も同じ曲でMADが作られてるのも納得だなあ、とか思ってた。いや普通に春香の曲だから。だって春香のMADって基本的に別ボーカルを合わせてるのばっかりなんですもん!*4
この事実に気づいて、僕はますますアイドルマスターというゲームとナムコが好きになりました。いやー、いいノリしてますね。

黒い→かっこいい→閣下いい

黒春香というイメージは、元々は「アイドル育成ゲーム」の動画であるアイマスMADの幅を広げるものでした。黒なのでかっこいいイメージも合う。この場合春閣下なので、「閣下いい」。

キリっとした表情や少し怖い表情を上手く使ってかっこよさを出しています。
かっこいい春香を広めた功労者といえばやはりRidgerPの「阿修羅姫」と「春香覚醒カタルシス」あたりも外せないところ。一見笑顔ばかりのアイマスキャラを、キリっとした表情の止め絵でかっこよく見せるのはRidgerPの得意技ですね。

愚民爆誕

「表情」というポイントからはちょっと離れてしまいますが、春香のイメージに言及するならここは避けては通れません。春閣下と愚民の誕生です。

出ました、愚民弾幕。愚民動画のあるところ、たとえそれがランキングだろうが企画モノだろうがどこにでも沸いてくるよく訓練されたネタ師達。この概念を定着させた記念碑的作品が「洗脳・搾取・虎の巻」。現在でも24時間いつでも最大級の弾幕で埋め尽くされている愚民の聖地です。↑のスナップショットを見れば一目瞭然でしょうが、あの弾幕の強烈な説得力ときたら! 何も知らずに見ても「何か凄いことが起こっている」と強引に思わせられます。


ニコニコで発展した「弾幕」とアイマスの「黒春香」の概念が融合し、偶像崇拝へと至る。そう、アイドルからかけ離れたネタで人気となった春香は、ここに来てアイドルに戻ったのです。

黒春香⇔白春香

一時期黒ばかりで埋め尽くされた春香作品ですが、そのおかげでたまに出てくるいかにもアイドルらしい動画が異様にかわいく見えるという効果が発生します。まあ一種のプラシーボ効果ですな。

ごくごく普通にアイドルしてるんだけど、↑の黒い春香をふまえた上で見ると異様なまでにかわいさが増幅されて見えてくるんだよね。元々無個性であることをカバーするために生まれた黒春香のイメージが、今度は本来のアイドルとしての愛らしさを増幅する効果を生んでいる。

春香の動画を「黒」と「白」に分けたランキング動画なんてものまで出てきます。愚民も黒いの以外は興味ないかと思いきや、「閣下、まるでアイドルみたいです」「なんという白さ」と大喜びで飛びつくんだよね。

黒と白の融合

このように非常に極端な特徴付けで人気を得た春香ですが、たくさんの動画でアピールを繰り返して人気が上がってきた結果、黒白関係無く春香そのものの魅力に気づく人がだんだんと増えてきました。没個性なんてとんでもない、春香普通にかわいいじゃないかと。
というか、人間黒い部分もあれば白い部分もあるのが当たり前なんですよね。ある意味非常にわかりやすい属性の付けられた他キャラと違い没個性からスタートした春香は、両極端な特徴付けを吸収した結果、アイマスで最も「人間らしい」キャラとなったのです。


人間なら、笑ったり泣いたり拗ねて不満げな顔を見せたり怒って怖い顔をしたり、時には狂うことだってある。


ゲーム本編の上にニコニコでさらに物語を積み上げてきた春香なら、その全てを表現しても違和感が無いのです。なんつー便利なキャラでしょうか。「閣下三国志」や「春香達の夜」などが成立してしまうのも、この異常に汎用性の高い春香というキャラがいてこそでしょう。そりゃMAD使用率ナンバーワンを長期間維持してられるわけですね。

今回紹介した動画は、ほとんどサイドバーにて公開中のこちらのマイリストから取ってきてます。

後書き

というかこの記事長いよ!! 最初は「ここでキスして」って「春香さんが衣装で悩んでいるそうです」以来の表情を上手く活用した作品で最高だよね? ってことだけを書こうと思ってたのに! 余談で春香話を進めていったら春香まとめみたいになっちまいました。春香まとめなら花見川さんとことか黒春香(春閣下)動画まとめさんとかいいのが既にたくさんあるのに(笑)。いやー、だって春香のイメージの変遷ってダイナミックでめちゃくちゃ面白いじゃないですか。語りはじめたら止まりませんて。


春香ほど露骨ではないにしても、アイマスMADって現在進行形でキャラ一人一人に似たような物語が積み上げられ続けてるんですよね。インパクトの強い神MADはたくさんあるしそれらを単体で楽しむことももちろんできるんですけど、アイマスMADってジャンルの本当の面白さを知ろうと思ったらこの「物語」を知ってからが本番だと思う。
最初にはまった頃はアイマスMADってもはや原作ゲーム関係ねーじゃねーか! と興奮してたんだけど、そうじゃないんですよ。原作をプレイ済みの人はとっても有利。あらかじめ用意された物語があって、その上にさらに積み上げていけるんだから。

*1:週マスのラストのキャラ使用率とか見ると凄いよね。前回でようやく落ちたけどそれまで何周連続春香が一位だったことやら。

*2:ということにしておいてくれ(笑)。動画の作者コメと弾幕参照。

*3:この動画に限らず春香のMADには「orz」とか」「OTZ」とかのコメントがよく付いてますが、コレ別に落ち込んでるわけじゃなくて閣下への服従の証に「跪いて」るんですな。参考→http://www.nicovideo.jp/watch/sm1282826

*4:で、ここで「なぜならそれは音痴だから」というコメント→春香ファン「OK表出ろ」というのもお決まりのパターン。