しかし世の中理屈だけでは動かない

↑のエントリに関して。これ、理屈だけで言えばニコニコにとってもユーザーにとっても何も悪いことは無いツールのはずですよね。ニコニコは常にサーバー負荷に晒されていて、赤字の原因はほとんどそこって話だし。毎日のように通う人の多い人気動画までいちいち見るたびに再ダウンロードされてちゃたまんないはず。


でも、ここ最近の著作権関連の流れを見るに、もしかしてニコニコの運営はこの手のソフトを嫌うかもしれません。
いや、僕も最初はまさかと思ったんですよ。「Craving Explorer」の紹介記事であまりに便利すぎるから規制されるだろうってコメントがついたんですが、いくらなんでもそんなことはありえないだろうと。キャッシュだろうがなんだろうが見てる時点でDLは完了してるわけで、IEならテンポラリから実際にファイルを拾うことすらできる。単にその形を変えて便利にしただけで規制されるなんてわけがわかんないぞと。


しかしですね、この記事見て下さいよ。

 なお、本日の会合では、第30条の適用範囲から除外について検討してきた「違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画」の利用形態の説明として、「視聴のみを目的とするストリーミング配信サービス(例 投稿動画視聴サービス)については、一般にダウンロードを伴わないので検討の対象外である」という脚注を追記することが事務局から提案された。

 この脚注を加えた理由について文化庁著作権課の川瀬真氏は、一部の新聞や雑誌で「YouTube」などの動画共有サイトを視聴することも第30条の適用から除外されるという記事があったためと説明。この点については「誤解である」と述べ、視聴のみを目的とするストリーミング配信は一般にダウンロードを伴わないため、動画共有サイトを視聴するだけでは違法行為にはならないとする見解を示した。

 なお、YouTubeなどの動画共有サイトを視聴する際には、動画ファイルのキャッシュがPC内のHDDに一時的に保存される。この点についてIT・ジャーナリストの津田大介氏は、「違法ダウンロードが法制化された場合は、キャッシュとして保存することも複製と見なされ、違法行為になってしまうのか」と疑問を示した。

 この質問に対して川瀬氏は、「それが複製にあたるかどうかの知識はない」と前置きした上で、2006年1月に提出された文化審議会著作権分科会報告書の内容を紹介。それによれば、文化審議会著作権分科会に設けられた「法制小委員会」において、仮に現行の著作権法でキャッシュが「複製」と解釈されても、権利制限を加えるべきではないとする見解が示され、法改正事項として挙げられていると答えた。

>ストリーミング配信は一般的にダウンロードを伴わないため
>ストリーミング配信は一般的にダウンロードを伴わないため
>ストリーミング配信は一般的にダウンロードを伴わないため
伴います。
現行の動画配信サービスで、再生部分だけしかダウンロードしない完全なストリーミング配信なんてあるんだろうか? Gyaoとかどういう方式なんだろ? いや、それ以前に「youtubeなどの動画を試聴することも」って質問だしなあ……。
これ、ほんとにたまたまこのひとが知らなかっただけだと思うんだけど、この委員会の人たちが皆本当にこのレベルの知識で法改正をしようとしている、あるいはわかってる上でそらっとぼけてるとしたら恐ろしいなあ。

 続けて津田氏は、動画共有サイトに公開されている動画について、専用ソフトを使ってダウンロードする行為は「情を知って」録音録画することになるのか質問。これに対しては川瀬氏が、動画共有サイトに違法著作物がアップロードされていることを理解している場合は「情を知って」に該当すると回答。さらにストリーミング配信から専用ソフトで動画をダウンロードすることが、コピーコントロールを回避する行為と認められれば著作権侵害になると答えた。

ここらへんもなんかおかしいんだよね。「専用ソフトを使ってダウンロード」ってのは、本来関係ないはずなんですよ。要は「情を知って」ダウンロードするかどうかが焦点なのに、なぜかここで関係ないはずの「専用ソフト」という概念が混じってきている。専用ソフト使おうが使うまいが、DLはしてるわけです。コピーも可能なわけです。
なら「情を知って」ニコニコ動画youtubeを試聴した場合はどうなるのか? 「情を知って」IEのキャッシュからファイルを移動した場合はどうなるのか? 「情を知って」キャッシュフォルダを使いやすい場所に移動したらどうなるのか? 最後は要するに↑のエントリのツールがやっていることです。
これで、試聴した場合のみが著作権侵害に当たらないとする見解になるのなら、もうわけがわからない。そんなどこまでも拡大解釈できてしまう法律ができてしまっては、いくらなんでも危険すぎると思うのだけど。

追記

  • これまで「一時的蓄積」は著作権法上の「複製」ではないと解されてきた。
  • しかし、法律の文言上は「複製」と解する余地はあり、他国が「複製」に相当するものとして扱う可能性もあることから、今後においても「複製」でないとの解釈が継続しない可能性はある。
  • 解釈を変更する場合においても、他の「複製」と同様に取り扱うと情報通信に支障が生じる恐れがあるので、そうした事情を勘案した特別な「複製」にする必要があり、かつ、「複製」と解される「一時的蓄積」の範囲については、むやみに広くならぬよう慎重な検討が必要である。
  • この問題については、技術動向(それこそ、発信側は「ストリーミング」のみを想定していても、受信側で「ダウンロード」が可能な手段の普及も含まれるでしょう)も見極めながら、平成19年を目途に結論を得る予定。

なるほど。つまりこういう背景があっての発言ということですか。実際には「ダウンロード」していてもそれが法律上の「複製」に当たるという解釈をされるとは限らない、と。しかし一時的蓄積でなければ「複製」になる? ど……どうやって判断するんだそんなもの。
そうか、そこでDL目的のツールならば「複製」だろうって解釈に繋がるわけか。……NicoCacheの作者はニコニコ内部での快適さが増してサーバの負担が減る、ということだけを書いている。つまり、「DL用のツールではなくあくまでキャッシュである」ってことが重要ということ? つまり僕がDL用としても使えるよって書いてるのは空気読めてないということ?


いや、そんなバカな! やってることは同じことじゃないか。同じようにHDDに保存されてるものが場合によって「複製」と解釈されたりされなかったりする? 移動もコピーもしなくたってその場で再生することは出来るのに? 再生した時点で違法? それがこれから作られようとしてる法律?
この理屈で言うと、「NicoCache」のように「DL目的ではなく、あくまでキャッシュですよ」と言い張れるツールのみが生き残ることになる。いや……「NicoCache」はキャッシュ消さないから「一時的」とは認められないか。では認められるのはIEのような一時的なキャッシュのみになる? そして、IEのキャッシュを個別に利用した時点で違法と。なるほど、一応筋は通るな。
でも……納得いかねえええええ! なんじゃそりゃーーーーーーー!!!!