市場の力と、権利者削除の力

うん、まさに先を越されたなという感じの記事。このような節目節目を示唆する記事は、後で見直して整理するためにも忘れずに書いておきたかった。まあぶっちゃけ楽できて助かるけど、自分で書かないとどうしても個人による認識の違いはあるからね。


しかしこういう記事を見ていると、アイマスMADの歴史はまさにMADの歴史の早回しだなあとしみじみと思います。でも、どういうわけかただ一点、著作権問題での危機だけが欠落しているんだよね。何度も何度も潰れかけ復活し……というプロセスが無く、ひたすら拡大をし続けている(だから早回しになる)。これ、不自然なんですよね。うれしいことだけど、同時に僕は不安でしかたない。市場は大きな可能性ではあるけども、花見川さんが言うように現在見逃されている決定的な理由、というほどの力を持ってるとは僕には思えないので。


ニコニコのMADが大きな危機に見舞われていない理由は、作者が孤軍奮闘で著作権者と向き合っているわけではなく、ニコニコ動画の運営というフィルターを通していることが最も大きな理由なのではないかと思います。個人ではなく歴とした企業が矢面に立っている。ニコニコのMAD作者は運営によって手厚く保護されているんです*1。具体的に言うと「権利者削除」の存在が大きい。
ニコニコ動画の「権利者削除」というシステムは、この手の問題を「0か1か」ではっきりと分けないという部分が素晴らしいんですよね。一つの動画に対する権利者の抗議が、あくまで該当の動画だけの問題で終わって他に広がらない*2。宣伝目的なりファンサービスなりの理由で黙認されるパターンと、黙認されず抗議されるパターンが同時に存在することが可能なんです。
考えてみてください、これが個々の作者自身が自分のサイトで公開している場合だったとしたら? 一人の作者に警告が届き、サイト閉鎖→連鎖的に他の作者も自粛傾向となり次々と自主閉鎖→氷河期到来……という展開が目に見えるようです。警告を受けた作者がすぐに圧縮版を再UPするなんて行動は以前の常識からは信じられません。制作自体をやめてしまうか、しばらく地下にもぐるか、どちらにせよしばらくの間その作者の作品を拝むことは不可能になっていたはずです。


ニコニコ市場」はまだ決定的な力を持ち得てはいないけれど、黙認するパターンを増加させているという効果は既にあるでしょう。しかし、現状本当にジャンルを守っているのは「権利者削除」です。このシステムが崩壊したとき、一気に発展してきたアイマスMADというジャンルはあっけなくニコニコ動画もろとも崩れ去るでしょう。そうはならず、「権利者削除」や「市場」、さらにはまだ見ぬ新しいサービスによって安定した状態が確立することを、僕は切に願います。


続き → ニコニコ動画に見る未来の著作権の形

*1:保護するつもりがあるかどうかはともかく、現状そうなっているのは確か。

*2:こないだのわかむらPのようにとばっちり全削除というパターンもありますが、問題の動画以外は再UPしても消されませんでしたし。