好きだけど納得いかないエロゲ

前のネタ帳エントリにさひろさんがリクエストのコメントを付けてくれています。それ自体もすごくありがたいんだけど、ついでとばかりに話題に挙げられてるゲームが……最初に挙げてた『遥かに仰ぎ、麗しの』『車輪の国、向日葵の少女』からはじまって、『こなたよりかなたまで』『キラークイーン』『わんことくらそう』『ネコっかわいがり!』『ワンコとリリー』『PRINCESS WALTZ』……とまあ、どれもこれもネタにしたくなるようなもんばっか。ああ、どこから突っ込んだらいいんだ(笑)。


とりあえず今日はせっかくリクエスト頂いたので、「かにしの」に絞って色々と考えてみます。


遥かに仰ぎ麗しの 初回版

遥かに仰ぎ麗しの 初回版

さひろさんも最初に挙げてらう゛宣言してた「かにしの」こと『遥かに仰ぎ、麗しの』。パッケージや紹介を見ればわかると思うのですが、もろに王道のエロゲ! という印象のゲームで、文句無しにノベルゲームでは去年一番の大作と言っても過言ではないでしょう。実際の内容も、萌えとエロと面白さをめいっぱい詰め込んだ、こういうのが好きな人にはたまらない内容のゲームです。では、なぜ好き嫌いがわかれるなんていったのか? ちなみに、この手のいかにもエロゲ的なものに対する一般人の拒否反応がどうこうって話ではありません。そんな前提段階の話したって面白くない。
ではなぜかというと、ゲーム自体の好き嫌いが分かれるんじゃなく、ゲーム内のシナリオが、どうしても好き嫌いが分かれてしまう作りになってるんですよね。


「かにしの」はわりと個性が強い実力派のライターを二人起用してるんですが、その二人を共存させるために取ってる方法がえらく豪快でして、ヒロインを大きく「分校系」「本校系」に分け、最初の選択肢でどっちかのルートを確定させてそっから先は完全にライターを分けて分業してるんです。
で、この二人がまた見事なまでに全然違う作風なものだから、それぞれのルートがほぼ全く違うゲームになっている。しかもそこまでやって開き直っちゃったのか、シナリオの内容だけじゃなくキャラの性格(何よりも主人公がほぼ別人!)、果ては伏線などの設定に至るまで全く整合性を取る気がない(笑)。ある意味、一つのパッケージとしての統一感を放棄してしまってるんですね。
そこまで思い切ったことをやった甲斐あって、このゲームはそれぞれのライターの個性を全く殺さずどちらにもいかんなく実力を発揮させることに成功しています。「本校ルート」はわりとテーマ性を強く打ち出した物語として、「分校ルート」は楽しい萌えエロゲとして、どちらも出色の出来に仕上がっている。まあ、ここまで面白いと二つのものが同時に楽しめるぶんお得だといえるんじゃね? と思えないこともない。


ただ、完全に成功してるかというとそんなことはないんだよなあ。どちらも面白いことは確かだけど、少なくとも二つのシナリオが混在することでプラスになってる部分は特にないような気がする。だって分校系と本校系交互にやるとめちゃくちゃ混乱しますよこれ。テキストのリズムもストーリーのスピードも重視してる部分も違いすぎる。「どちらのルートも好き」って人はいても「どちらのルートも同じくらい好き」って人はめったにいないんじゃないかな。どうしてもどっちか片方に寄った視点でプレイしてしまうと思う。
実は混乱の元になってるのって、「整合性が無い部分」じゃなくて、むしろ中途半端に合ってる部分のような気もするんですよね。変に主人公の生い立ちとかの設定が同じなせいで、性格が違いすぎたり重要な伏線が食い違ったりすると脱力するんですよ。ここまでしたんなら最初からパラレルワールドみたいに完全に別物にしちゃえばいいんじゃね? って突っ込みたくなってしまう。
複数ライター起用の弱点を強引に解決してしまおう! という狙いは面白いんですけどね。「好きだけど嫌い」というよりも「好きだけど納得いかない」って感じかな。
ここらへんのパッケージとしての統一感の無さって、前の君望の話と繋がる部分がありますよね。もちろんこういう統一感の無いエロゲだってあってもいいと思うけど、それならそれで別シナリオの邪魔にならない方法はないもんかなあ。そりゃ別のゲームにすりゃ解決じゃんって話だけど、片方無かったほうが良かったの? って聞かれるといやいやそりゃもったいない! と思うんだよね。


ちなみにさひろさんは「確かに本校ルートは好みわかれるかも」って言ってるけど、僕が好きなのはむしろ本校ルートのほうだったりする。本校が好み分かれるって思われる理由はたぶんテーマ性を強く押し出してるからだと思うんですが、僕がこのゲームで気になるのはどちらのシナリオが好き嫌い分かれやすいかということよりも、上記のような食い合わせの問題なんですよね。
たとえば、分校ルートは単品としてはとっても楽しいんだけど、シナリオ同士の喰い合わせって部分にはけっこう無頓着で、あるシナリオでさんざん苦労して解決した問題が、次のシナリオでは主人公が関与しないままあっさり解決したりする。
こういうひとつながりのシナリオより、その場の楽しさとエロさを優先する型ってエロゲでは別に珍しくないし、単品なら僕もああそういうゲームかと思って何も気にせずに楽しんだと思うんですが、あまりにも本校系のシナリオとの食い合わせが悪すぎて「ああ、せめて主人公を別人にしてくれれば」*1とか思ってしまう。
逆に、分校ルート視点から見てみると本校系のシナリオは空気読まずにポエムしすぎだろってことになるよね。どっちかの視点に立つとどうしてももう片方が邪魔に見える作りになってしまってるような気がするんですよ。なんかもったいなく見えてしょうがない。豪快にズバっと分ける戦略をとったんなら、それを回避できる方法もなんとかしてほしかったなーと。いやー、そりゃ難しいとは思うんだけどさ(笑)。どちらのルートも面白いだけに、お互いの足引っ張ってしまってるのが気になっちゃうんだよね。
  
ああ、こうなると思ったから一個に絞ったのに、結局めちゃくちゃ長くなっちゃったじゃないかよ! なんでもうちょっとまとめて書けないんだ僕は。
他に挙げられたゲームについても、『PRINCESS WALTZ』は途中までが圧倒的に面白いだけに中盤以降が惜しすぎだよねとか健速氏はこなかなの頃に比べてポエミィな空間に巻き込む能力がアップしてるよなーとかでも『キラークイーン』は面白そうなんだけど冒頭でいきなり視点変更しまくるのがつらくてまだやってませんとか『ネコっかわいがり!』は後半の崩壊感は圧倒的だけど前半がつらすぎたとか『車輪の国』に対する嫌悪感はアージュに対するものと似ている、でもなぜか好きとか、まあ、色々と言いたいことはたくさんありますが*2、キリがないのでここらへんで。

PRINCESS WALTZ 初回版

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ネコっかわいがり!~クレインイヌネコ病院診療中~

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車輪の国、向日葵の少女 通常版

車輪の国、向日葵の少女 通常版

*1:実際性格的には完全に別人なので、同一人物って設定にする意味は全く無い気がする

*2:言ってるじゃねえか!